4部分:第四章
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ったな」
「大人しい蜃だったのじゃろうな」
李白はそう結論付けた。しかしそれで話は終わりではなかった。
「それでですね」
「聞きたいことはわかっておるぞ」
李白は客の一人の言葉に応えた。
「わしの詩のことじゃな」
「はい、それです」
「どうしてあの詩で消えたのでしょうか」
「あの詩にはあることを書いておいた」
そう彼等に告げた。
「あること?」
「詩、いや文字や言葉にはそれだけで力があるのじゃ」
「力が」
「そう。天に昇るように書いておいた」
それがあの詩の秘密なのであった。李白はそれを詩に書いて蜃に贈った。そういうわけであったのだ。
「それでじゃ。あの蜃を天に昇らせたのじゃ」
「そうだったのですか」
「これであの橋に蜃はいなくなった」
彼はまた言った。
「平和が戻ったというわけじゃ」
「まずは安心ですね」
「しかし。それにしても」
李白の話を聞いた後で人々は話し合う。
「世の中何が起こるか何がいるのかわからないな」
「全くだ。それに」
そう話し合ってまた李白の方を見る。楽しげに酒を飲んでいる彼を。
「詩で凄いことができる人もいるもんだ」
「全く世の中っていうのはわからないものだな」
李白をあらためて見て言うのであった。彼等は世の中というものの深さを再び知ることになった。だが当の李白は相変わらずの様子で楽しげに酒を飲んでいるままであった。まるで仙人のように。
蜃気楼 完
2008・1・10
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