4部分:第四章
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第四章
「さて、蜃よ」
李白はその詩を書きながら蜃気楼に向かって言うのであった。
「この詩をそなたに捧げる。これを持って天に昇れ。さすれば」
そうしてまた言う。
「龍になれるぞ。さて」
書き終えた詩を橋の上から投げ落とす。するとそれが川に落ちたその時に幻がすうっと消え去ったのであった。後には何も残ってはいなかった。
「これは一体」
「それに蜃とは」
客達は納得できなかった。何が起こったのかわからない。しかし一つだけわかっていることがあった。それは幻が消え去ったということであった。
そこに李白が戻って来る。彼はこれまでと同じく平気な顔であった。人々はその彼に対して問うのであった。
「あの、どうして幻が消えたのでしょうか」
「それもですね」
彼等にとってはわからないことだからである。問わずにはいられなかった。
「どうして詩を川に入れたら消えたのか」
「あれも一体」
「まあ何じゃ」
しかし唯一人落ち着いている李白は彼等に対して言う。その言葉は。
「まずは店に戻ろうか」
「店にですか」
「そうじゃ。ここで話すのも何じゃ」
そう言葉を出す。
「だから店でな。話そうぞ」
「はあ。そういうことでしたら」
「そこで」
こうして一旦店に戻って飲みなおしながら話に入った。李白は客達に囲まれてまた飲んでいた。その中で話すのであった。
「あれは蜃というものじゃ」
「蜃!?」
「何でしょうかそれは」
「龍の一種じゃ。まずは蛇と雉が正月に交わりその卵が地の底深くに入って三百年程経ってから生まれるものじゃ」
「また随分と変わった生まれ方ですね」
「何しろ龍の一種じゃからな」
それをまた言うのだった。
「姿は龍にしてはあまり大きくはないが鹿の角がありに地色のたてがみと土色で逆向きの鱗を持っているのじゃ」
「成程、そうした姿をしているのですか」
「うむ。ああしたように幻を出すことが得意なのじゃ」
だからこうして蜃気楼を出したのであった。そういうことであった。
「だから蜃気楼から蜃となっているのじゃよ」
「そうだったのですか」
「うむ」
まずはここまで話して一杯飲んだ。そこにまた注いでまた飲む。
「好物は燕でな。燕を食った者が側に通るとああして幻を出すのじゃ」
「ふうむ、そこまで御存知だったのですか」
「話を聞けば納得できますが」
「しかし。運がよかったのう」
李白はここでふとした感じで言うのであった。
「運がよかったのですか」
「そうじゃ。あれは無類の燕好きでな」
その燕を生姜で煮たものを食べている。
「燕を食べた者を襲うのじゃが。それがないとはな」
「運がよかったのですか」
「左様。それはまずよかったな」
「龍に襲われたらそれこそ」
「ひとたまりもなか
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