第四章
[8]前話
「人間に見られて」
「そこを猟銃で狙われて」
「撃たれるかも知れないわ」
「それに対してお水の中に隠れたら」
湖のその中にです。
「姿は見えないし」
「猟銃の弾も届かないわ」
「そっちの方がずっといいのね」
「私達にとっては」
「そういうことなのね」
「だから私は泳げる方がいいの」
またこう言うジマイマさんでした。
「ずっとね」
「そうなのね、わかったわ」
お母さんもそのことを聞いて述べました。
「家鴨さん達はそうなのね」
「ええ、本当にね」
「私達もそうだしね」
飛べない兎さん達もとです、お母さんはジマイマさんに言いました。
「飛べないけれど」
「ちゃんとやっていけてるわね」
「ええ、走って隠れてね」
「隠れることが一番いいかしら」
「私達にとってはね」
「その色なら隠れやすいし」
野兎のその茶色の毛も見て言うのでした。
「いいじゃない」
「言われてみればそうね」
「兎さん達にしてもね」
「そうね、けれど家鴨さん達は」
「私達は?」
「白くて目立たない?」
「いえ、湖の中だと白くてもね」
この色でもだというのです。
「水面が光を反射して銀色じゃない」
「あっ、銀色と白は似ている色だから」
「波が白くもなるから」
「目立たないのね」
「草陰にしても深いし。根の方は白いじゃない」
「だから白くてもなの」
「そう、大丈夫なのよ」
目立たないというのです。
「ちゃんと保護色になるのよ」
「身体のことも」
「そう、普通にね」
「成程ね、私の心配は杞憂だったのかしら」
「杞憂になるかしら」
「別に心配しなくてもいいことだったのね」
家鴨も飛べたら危険に遭わないということがです。
「そうなのね」
「そう思うわ、けれど」
「けれどなのね」
「そうなの、けれど有り難う」
「有り難うって?」
「私達が飛べることを教えてくれて」
それで、というのです。
「面白いことがわかったわ」
「それでなのね」
「そう、覚えておくわ」
「じゃあいざとなったら」
「ひょっとしたらね」
その時はというのです。
「飛ぶかも知れないわ」
「けれどその時までは」
「泳げれば充分だから」
「飛ばないのね」
「ええ、そうするわ」
こう言ってでした、ジマイマさんはお母さんと一緒に買いものをするのでした。家鴨のその足をぺたぺたとさせながら。
あひるのジマイマさんのお話 完
2014・11・14
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