3部分:第三章
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、幾らでも書けるぞ」
李白の返事はここでも平然としたものであった。
「わしはそれこそ酒があればな」
「そうなのですか」
「わしの詩が書かれているとあればよい宣伝になるじゃろ」
それが彼の言葉であった。
「それを代金にしておいてもよいな」
「ええ、どうぞ」
親父としても下手に金を払ってもらうよりもそちらの方がずっと価値のあるものだ。断わる筈もなかった。
「では。あと二つ書いておくぞ」
「はい」
こうして李白は酒と燕の代金に詩を三つ書いておいたのであった。それが終わってからゆうるりと店を出る。その彼に客達が声をかけた。
「あの、李白さん」
「何じゃ?」
まだ酒に酔った赤い顔でその客達に応えるのだった。
「そっち言ったら危ないですよ」
「そうですよ」
「朱雀橋の方がか」
李白は客達の言葉にこう言葉を返した。
「わかってるじゃないですか」
「じゃあ余計に」
「それじゃ」
しかし彼はここで言うのだった。
「だからこそ行くのじゃよ」
「だからって」
「まさかそれは」
「左様、そのまさか」
声はにこりとしたものだが同時に強いものになった。
「蜃気楼のことは聞いておるのじゃ。それを解決してみせよう」
「全部御存知なのですか」
「しかしあれは」
「あれがどうして出るのかはわかっておる」
李白はもうそれを知っているようであった。だからこそ落ち着いているようである。
「だから安心しておれ」
「退治できるのですね」
「退治というかな」
だがここで李白は少し考える顔になるのだった。
「上に昇ってもらうのじゃ」
「上にですか」
「何ならついてきてもよいぞ」
周りにいる客達にまた声をかけた。
「滅多に見られないものが見られるからのう」
「滅多にって」
「どうする?」
客達は李白の言葉を聞いて顔を見合わせる。そうして彼等だけで話に入るのだった。
「いいんじゃないのか?」
「そうだよな」
とりあえず行くことで話が決まった。
「何か危険でもないようだし」
「それなら」
「さて」
李白は彼等を引き連れて橋に向かう。そこでまた言うのだった。
「既にものは揃っておる」
「ものですか」
「これじゃ」
彼は客達の前にあるものを出してきた。見ればそれは店から持って来た筆と硯である。
「これさえあればいいのじゃ」
「妖かしの相手でもですか」
「何、一向に構わん」
また平気な顔で一同に告げる。
「わしはこれで何でもできるからな」
「何でもですか」
「確かに剣も使える」
これは本当のことである。李白は侠を愛しており若き日は武芸を愛していた。それで喧嘩をしてその相手を斬り殺したこともある。だから彼は剣にはそれなりの自信があるのだ。
「しかしわしはやはりこ
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