1部
日向ネジ 3
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の爆発的速度の掌打は速度だけで言えば柔拳の中でも最速といえる。極めた者は一晩の豪雨の中、ただの一雫も浴びずに過ごすと言われているような技だ。
流石にそこまでの高みでは無いにしろ、ヒナタ様の技術は並大抵の努力では得られない域の物だ。彼女の迎撃は今まで俺が放った柔拳の全てを受けきる事が出来るだろう。いわば、あの守護八卦は回避を完全に捨てた攻防形態、小手先の技術など一切通用しない。
それを理解しているが故に、俺は一旦下がらざるを得ない。
その光景にヒジリ様以外は驚きの声を上げ、ヒジリ様だけはこの試合の結果を察したようで静かに目を瞑った。
ヒナタ様の守護八卦は間違いなく今の彼女の全力、ならば俺はそれに全力で応えなければならない。それは彼女への憎悪は関係ない。
この一撃は俺の誇り故に放とう。
「八卦太極掌」
会場中に爆音が響き渡ると同時に、俺の掌打は吸い込まれるようにヒナタ様の心臓を打った。
ヒジリ様の正面にチャクラを薄く張り、脚部からの強烈なチャクラの放出を推進力とした移動法から生み出した俺の技。足、膝、肩、肘からありったけのチャクラを放出し、四つの加速によって放つ神速の掌打。それが八卦太極掌、今の俺の全力だ。
その一撃で心臓の鼓動はその一撃で止まり、彼女は確かに意識を失った筈だ。
だが……彼女は意識のない状態で一歩踏み出し、俺の胸に掌を当てた。
「勝者 日向ネジ」
ヒナタ様がそのまま崩れ落ちそうになる寸前、俺は彼女を抱きかかえて、もう一度彼女の胸に掌打を打ち込む。
その瞬間、何者かに殴り飛ばされた。
「てめぇ、なにしやがんだ!!」
俺が起き上がって声の主を確認すると、うずまきナルトがこちらを凄まじい形相で睨んでいた。
「なんで勝ったあとにまで!?」
「ナルト、ちょっと落ち着きなさい」
俺に掴みかかろうとした彼をはたけカカシが止めて、ヒナタの方に視線をやった。
そこには咳き込んでこそいるものの、無事に意識を取り戻したヒナタ様がいた。
「試合を決めた一撃で彼女、心臓止まってたの。それをネジ君がさっきの一発で動かした、お前が殴ったのは単なる勘違いだよ」
本来ならば意識を刈り取る程度の攻撃でこの試合を終わらせられると思っていたが、どうやら彼女はもう手加減して相手をできるような人ではなかったようだ。どうやら俺の目も大分曇っていたようだ。
「私は負けたんですね……兄さん」
「ええ。あなたの負けですが……謝っておかなければならない事があります」
「…………」
「最後の一撃、確かに受け取りました。貴女は間違いなくヒジリ様の妹ですよ、ヒナタ様」
俺は伝えなければならない事を伝え、痛む胸を押さえつつ彼女に背を向ける。
「……今度は、負けません」
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