1部分:第一章
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うのであった。
「近頃ここに妖かしの者が出るそうなので」
「妖かしがか」
「そうです」
彼はその青い目の男について述べる。
「橋の上に立つと豪奢な楼閣の風景が川の上に見えまして。それで」
「何っ、楼閣がか」
「そうです」
また青い目の男に対して答えた。
「それがあまりにも続くのでこうして。挙句には誰も行き来することがなくなったのです」
「ふむ、それならばだ」
青い目の男はそれを聞いて考える顔になった。その長い顎鬚をしごきながら言うのである。
「何とかなるかも知れぬな」
「何とかなるのですか?」
「うむ。しかしじゃ」
ここで青い目の男はまた言うのであった。
「一杯やりたくなった」
「一杯ですか」
「そしてじゃ」
彼はここで察しをつけてきたのであった。
「燕を食わせてくれる店があるな」
「御存知なのですか」
「ふむ、やはりあるか」
その者の驚いたような言葉を聞いて確信するのであった。
「そうだと思ったわ」
「何故それがわかったのですか?」
「それも後でわかるわ。さて」
今はそれについて詳しく言わずに話題を変えてきた。
「ではその燕料理を楽しみたいのじゃが」
青い目の男の関心はそこにあった。
「その店は一体何処にあるのじゃ?案内してくれぬか」
「その店でしたら」
男もそれに応える。そうして江のほとりの方を指差すのであった。
「あちらでございます」
「あちらか」
「はい。何しろ繁盛している店ですので」
青い目の男は繁盛という言葉を聞いてまた目を細めさせた。どうやら鋭くそこに彼にとって非常にいいものを見つけたようである。
「それはいいことじゃ」
「すぐにわかると思いますよ」
「わかった。それでは」
「あっ、待って下さい」
だがここで彼はまた青い目の男に対して声をかけてきた。
「まだ何かあるのかのう」
「今案内を頼まれましたね」
話はそこであった。
「ですから。案内させて頂きますよ」
「ほう、律儀じゃな」
「子供の頃から親に言われていますので」
男はにこりと笑って青い目の男に応えてきた。
「それでですが」
「随分とよい親御さんなのじゃな」
「有り難うございます。何しろ随分生真面目な両親でして」
彼も自分の親を褒められて機嫌をよくさせた。やはり親が褒められていい気持ちになるのは誰でも同じなのであった。
「そうしたことには五月蝿いのですよ」
「いやいや、そうした方は滅多におらん」
青い目の男はまた言って彼の両親を褒め称えた。
「今は太平の世でもな。結構世の中は荒んでおるからのう」
「荒んでいますかね」
「多少の差はあれど人の世の中は何時でもそうじゃぞ」
青い目の男の言葉が達観したものになった。その青い目に何かしらの寂しさも加わ
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