始まりの日
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ものすごい速さで繰り出される技の応酬は武に精通した者にしか分からないほどの高度さを持っている。
片方がこぶしをつきだすとそれを片方がいなし、かわし、カウンターを放つ。
蹴りが繰り出されれば蹴りで威力を相殺しうまい具合に戦っている。
しかしもっと驚くべきことは戦っている片方が十歳前後の少年という点だ。その武技はもはや老境の達人ともいうべきものであった。しかし少年の方はだんだん体力がなくなってきたのかへばってきていた。
「参りました」
それだけ言うと首筋にあてがわれていた刃無しの剣、刃先が潰れた剣が振り払われた。
「ふう、やっと終わった。今日ちょっと練習きつかったです。何かあったんですか」
そう小父さんに向かって話しかけるも、小父さんはいつものように黙って家の中に引っ込んでしまっていた。
まぁいつものことだからしょうがないとこれまたいつものように諦める僕。
因みに僕の名前は満月北斗、まだ年若い子供である。自慢気に言うことではないが。
小父さんと僕は読んで字のごとく血縁関係がない。
なんでも昔僕の両親が交通事故で死んだ時に死にそうになっていた赤児の僕を助けてくれたらしい。
そのまま小父さんが僕を引き取って育ててくれた、命の恩人にして育ての親である。
名前も小父さんがわざわざ調べて来てくれたらしい。
お母さんもお父さんも僕にはいないが、不思議と寂しくは無いのはこの小父さんのおかげである。
小父さんは不器用な人でものをなんでも壊すし冗談一ついいやしない寡黙でよくわからない人だけど、叔父さんなりの優しさが僕にはわかる。だからおじさんのことは尊敬しているし感謝もしている。
だけど、そんな僕が唯一といっていいほど嫌なのは毎晩行われる特訓と言う名の死闘だ。
小父さんは何を思ったのか、3歳ぐらいの頃から戦闘訓練を僕に教えてくれるようになった。
最初は優しく教えてくれたけど年々訓練内容が酷になってきている。
まぁ親子で言うスキンシップみたいなもので拳と拳で語り合うことが僕たちにとっての愛情表現なのである、やっぱり言ってて可笑しいと思う。
それはともかく小父さんは僕にとってかけがえのない大切な人だ。
「北斗、ちょっといいか」
家に戻ると小父さんが珍しく僕を呼び止めた。
どれくらい珍しいかと言ったら、震度三の地震くらいかな?
僕たちの家は俗に言う古民家みたいな家で、友達が来た時はびっくりしていた。
小父さんもまさか僕が友達を呼ぶだなんて思っていなかったらしくびっくりしていたが。
そんな家だからもちろん土間もある。
その土間を挟んで対面に座ると小父さんが話し始めた。
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