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邪剣
7部分:第七章
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な」
「左様。それがなくて幸いだった」
 それを幸いとまで言うのだった。やはりオズワルドが悪霊達と決死の顔で戦いつつ悶え苦しんでいるのは冷酷な眼差しで見たままである。
「全く以ってな」
「そうだな。それではだ」
「もうすぐに終わるな」
 オズワルドの動きが鈍くなってきた。そしてそれと共にまた攻撃を受けていく。左右からも上からも後ろからも引き裂かれその血を垂れ流していく。そうして。
 片膝をついたところで一斉に襲われた。断末魔の悲鳴と血飛沫、後は何かが引き裂かれ潰され噛み砕かれていく音がした。だがそれは一瞬のことで後に残ったのは鮮血の池とその中央に突き刺さっている黒光りする禍々しい形の巨大な剣だけであった。それだけが残っていた。
「終わったな」
「うむ」
 ホークムーンはアーノルドの言葉に頷いた。
「終わりは呆気ないものだったな」
「そうだな。オズワルドは死んだ」
「そして剣は元の場所に戻った」
 クリスも言ってきた。
「たったそれだけだ」
「だが。やはり邪剣は邪剣だな」
 ホークムーンは達観した声で呟いた。
「見るのだ。あれを」
「むっ!?」
「剣が血を吸っている」
 ホークムーンの言う通りであった。それまで剣を濡らしその周りを染め上げていた鮮血は瞬く間に消えていく。剣がその鮮血を吸い込んでいたのだ。
 そうしてその血を吸うと共に剣は何か得体の知れぬ音を立てていた。まるで獣が生贄の生き血を啜り歓喜の声をあげるようにだ。
「あの男の血をな」
「剣が血を吸うのか」
「おそらく血だけではない」
 ホークムーンは言葉を付け加えてきた。
「その魂もな」
「そうか。魂もか」
「これでまた一つ悪霊があの剣に封じられた」
 ホークムーンはここでもまた醒めた言葉になっていた。
「またしてもな」
「そうか。またか」
「そう、まただ。これでまた一つだ」
「そして元の場所に突き刺さっている」
「これまでと同じく」
「あの剣は人に扱えるものではない」
 ホークムーンノ言葉は確かに冷たいものになっていたがそれ以上に龍らしい深い叡智に満ちたものであった。

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