5部分:第五章
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第五章
「誰か忘れていないか?」
「誰か?」
「そう、わしだ」
名乗りを挙げてきたのだった。
「わしがいるではないか。龍であるわしがな」
「というと」
「協力してくれるのか?」
「最初からそのつもりで来たのだが」
今の二人の多少とぼけた問いに少し拍子抜けしたような顔になったホークムーンだった。ドラゴンであっても中々表情豊かである。
「というよりはこちらから頼みに来たのだ」
「そうだったのか」
「そうだったのかも何も今までの話でわかるだろう」
こう言って呆れた顔にもなるのだった。
「全く。よくそれで冒険者になれるな」
「いや、そもそも龍を見ること事態が稀だしな」
「そうだ」
二人にしてみればそもそも龍が自分達の前にわざわざやって来ること自体が驚きなのだった。何しろ龍といえば滅多にいないものだからだ。
「そのあんたが頼みに来るとは」
「流石に思わないが」
「龍とて何かを頼む時はある」
ホークムーン自身の言葉である。
「自分一人でことを解決できそうにない時はな」
「そういうものか」
「そうだ。それにだ」
ホークムーンはまた言ってきた。
「御主等はそのオズワルドという男をよく知っているな」
「というよりかは有名な奴だ」
「当然悪い意味でだけれどな」
「そうだったな」
二人の言葉を聞いてまた頷く。
「それでは。今から洞窟に行くか」
「どうやってだ?」
「ここから洞窟までどれだけあるか」
二人は転移の魔法は使えないのだ。
「わかったものじゃない」
「何日かかるか」
「だからだ。わしは龍だ」
また自分のことを言うホークムーンだった。
「そしてこの森の主なのだぞ」
「ではどうにかなるのか?」
「貴方の力で」
「勿論だ。ここから洞窟になぞすぐだ」
断言するのであった。力強い声で。
「それこそな。瞬きする間だ」
「というとあんたは転移の魔法を使えるのか」
「当然使えるが使うまでもない」
「というと?」
「どうやって?」
「飛ぶのだ」
ここで誇らしげにその背にある翼をはばたかせた。
「これでな。この翼でな」
「そうか。それだったな」
「龍は空を飛べる」
そもそも二人の目の前に来たのも翼で空を飛んでだ。それを考えれば自明の理であった。
「ではそれで今から」
「あの洞窟へ」
「そうだ。二人共わしの背に乗れ」
あらためて二人に対して告げた。
「よいな。それでだ」
「ああ、わかった」
「ならそれで洞窟に」
「ただしだ」
しかしここで彼は二人に忠告するのであった。
「飛ばすからな。注意しておくのだ」
「それか」
「落ちれば唯ではすまん」
また二人に告げる。
「それこそな。命が幾つあっても足りんぞ」
「また物騒な話だな」
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