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第四十四話 二次移行
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思わず感情を露わにする。
『その機体は二次形態に達した……そしてそのデータも採集できた。機体は惜しいがこのまま墜とされればIS学園……つまりは日本が機体を接収するだろう。これ以上IS分野において日本が利するようなことを看過することはできん』
一方彼女の上司はただ淡々と、冷徹に言葉を続ける。
『それに所詮は試験機、データさえあればいくらでも代替は可能だ』
それはナターシャにとって理解はできても、到底納得できない命令だった。
彼女はテストパイロットに任命されてからこの機体をまるで自分の子供のように可愛がってきた。単なるISと操縦者という関係ではない……故にその命令は親に子を殺せと言っているのと同義であった。
『なら……私がこの場を脱することが出来ればこの子は死なずに済むんですね』
『その可能性は限りなく低い、目の前の相手は異常だ!』
『それでも!』
『やめ……』
ナターシャは上司の言葉を待たずに通信をOFFにする。
仮に逃げることができても、国に戻れば自分は処罰されるかもしれない。それでも、この機体が無事である可能性があるなら、と彼女は覚悟を決めたのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
一夏と箒がエムと戦闘を開始した一方で、紫苑は目の前の状況に戸惑っていた。
(動かない……?)
二次移行により銀の福音から感じる圧力は増している。にも関わらず、再び動きを止めてしまい一切攻撃をしてこなかったのだ。
紫苑としてはその隙をつくことも考えたのだが、二次形態でどのような力を得たのか想像もつかないため、一定の距離で様子見をすることにしたのだ。
だがそのわずかな時間が銀の福音……ナターシャの覚醒と覚悟をもたらした。
やがて、事態は動き出す。先に動き出したのはナターシャだ。二次形態より発現したエネルギーの翼が容赦の無い攻撃を繰り出す。
それは先ほどまでの機械然としたものから、明らかに感情がある人間のものへと変化していた。
そして、それがさらに紫苑を動揺させる。
『もしかして……意識が戻っているのですか?』
『この子を死なせる訳にはいかないのよ!』
迫るエネルギーの弾雨を八咫鏡で逸らしながら呼びかけた紫苑だが、返ってきた答えは彼に理解できるものではなかった。
ナターシャは半ば混乱しながらも、必死に離脱を試みる。しかし紫苑もこんな状態の相手を逃がした場合、どんな被害が起こるか想像できないため、天叢雲剣の伸縮を利用してとにかく退路を遮るように動いていた。
『邪魔をしないでぇっ!』
『はぁっ!』
そしてその決着はすぐに訪れる。
紫苑を排除しなければ離脱は困難だと判断したナターシャが、抗戦を選んだ……その時点で勝敗は決
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