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第四十四話 二次移行
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た。
(もしかしたら姉さんも……)
紅椿という唯一無二の贈り物を譲り受けてなお、箒は束の思いを信じ切ることができなかった。だが今、彼女の中で何かが変わった。一夏がすべてだった彼女の世界が今、広がっていく。
そして箒の手が紫苑に届いた瞬間、光は収束する。同時に巻き起こるエネルギーの奔流。
それは『絢爛舞踏』、一夏に対する箒の強い思いにより目覚めた唯一無二の力……単一仕様能力。しかし世界の広がった箒にとって、この力はもはや一夏のためだけに使われるものではない。
白式の『零落白夜』のエネルギー消滅能力と対をなす、エネルギー増幅能力。先ほどエムの攻撃に耐えることができたのも、微かに残っていたエネルギーをこの能力により一気に増幅させたからだ。そして今、そのエネルギーは紫苑の天照へと渡る。本来であればコアのシンクロなどが必要で困難が伴うエネルギー譲渡、それをただ触れるだけで一瞬で。
ちょうどそのころ、相互意識干渉から目覚めつつあった紫苑は箒の姿と自分の現状を認識して一瞬驚愕するも、すぐに落ち着きを取り戻す。そして未だ混乱した様子の箒を安心させるために優しく微笑みかけた。
『ありがとうございます、箒さん』
このとき、改めて箒は思い知った。この人を遠ざけていたのは自分だったのだと。
『あの……その』
そのまま何かを言おうとする箒だが、紫苑はそれ以上は不要とばかりに人差し指を彼女の口元に運び、言葉を遮る。それは、今までのことは気にしていないし謝る必要も無い、という彼からのサイン。
『今は、織斑君を。私は……彼女達を止めます』
また、同時に彼は一夏が自分と同様に海に墜とされたことも認識しており一刻も早い救出が必要だと感じていた。
『! わ、わかりました……紫音さん!』
ただ名前を呼び合うだけの行為。それだけで箒は吹っ切れた思いだった。先ほどまでの暗鬱とした表情は既になく、ただ鋭い目線でもう一つの光柱へと向かう。その口元に微かな笑みを浮かべながら。
そしてそれは紫苑も同じだった。
束の妹、頼まれたから、切っ掛けはそんな程度ではあるがそれでも数ヶ月の間に目が離せない存在になっていた。もっともそれは単純な好意では決してなく、危なっかしいからというような、曖昧なものだったが。それでも悪感情をもっていたかといえばそうではない。
彼もできれば、箒とは蟠りなく接したかったのだ。そしてそれは今叶った。
束の存在がある程度抑えていたとはいえ、以前は負の感情が溢れていた紫苑。しかしその負の感情が彼の原動力となっていたのも事実だ。
しかし学園に入りやがてゼロを経て、それは正へと反転した。黒が
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