四十六話:君へと捧げる鎮魂歌
[9/13]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
シルフの四大精霊が付き従うように現れる。その姿に驚きながらもジュード達はゆっくりと彼女に近づいていく。何故ならそれは彼等がよく知る人物だったからだ。
『ミ……ラ……』
そう声にするジュードの口を彼女は指で塞ぐ。ルドガーはそんな彼女の登場にも気づいているのか分からない程、茫然自失し彼女の手を離した左腕を見つめて俯いているだけだった。朱乃はその様子をみてかつて自分を守る為に母が死んだときの自分を思い出す。そんな重苦しい空気の中リドウが待っていましたとばかりに場違いな拍手をしながら彼女の名前を口にする。
『やっとお出ましだね、ミラ=マクスウェル!』
そんなリドウの言葉を無視してミラ=マクスウェルはエルの元に歩いていき、戸惑うエルに凛とした声で話しかける。
『その剣を貸してもらえるか?』
『………………』
『ありがとう』
ミラは無言でエルから差し出された“ミラ”の剣を受けとり、礼を言う。そんな様子を茫然と見ている黒歌達はそこで彼女が“ミラ”でないことを理解する。そしてミラはジュード達の前に戻り、リドウへとその剣の切っ先を向け力強い声で言い放つ。
『相応の礼をさせてもらおう』
その言葉に従い、リドウに向けてイフリートから放たれる業火球、ウンディーネによる水の砲丸、シルフの風の刃、そしてノームにより大地の棘。それをリドウは壁を蹴って上空に上りながら巧みにかわしていき地面に降り立ちナイフを構える。
『あ、そう。大精霊って、寝起き悪いんだ』
そう言って斬りかかって来るリドウをミラが剣で受け止めそして弾き返す。そしてリドウが下がった所目掛けて先程まで俯いていたルドガーが悲痛な叫びをあげながら斬りかかっていく。
『あははは! 面白くなってきた!』
『うおおおおおっ!!』
『何だよ、ルドガー君。もしかしてニセ者に惚れてたのか?』
『これ以上、俺とエルのミラを侮辱するなあああああっ!!』
ホールに響き渡る悲しみの咆哮は今、彼が彼女に捧げることのできる唯一の鎮魂歌だった。そんな悲しみの歌を黒歌は悲痛な面持ちで聞いていた。自分の彼氏が自分以外の女性の為に悲しんでいる姿に思うところがないわけではないが、それ以上に彼の悲しみを癒してあげることが出来ないことが苦しかった。
そして、なぜ彼が自分に刃を向けてまで自分を守ろうとするのかの一端を知った。彼はもう二度と愛する人を失いたくなのだと。それこそ、手を振り払う力を奪ってしまってでも。
その後、戦いはルドガー達の勝利に終わりリドウは逃げ去って行ったが、無事にマルシア首相を助け出すことには成功した。しかし、ルドガーの顔には笑顔など欠片もなかった。なぜなら―――
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ