四十六話:君へと捧げる鎮魂歌
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『あきらめちゃダメ、ミラー!』
『お前は、諦めろ!』
必死に叫び声を上げてミラを助けようとするルドガーとエル。しかし、現実というものは残酷だ。リドウがナイフを振り上げエルの体に突き立てる構えを見せる。その事にルフェイがやめてと悲鳴を上げるが勿論リドウには聞こえない。もっとも聞こえたところで聞き入れる可能性はゼロだろうが。
『しっかりしろ! 誰がエルのスープをつくるんだ!』
『……ごめん。あなたがつくってあげて』
ルドガーの言葉に最後に無理やり作ったような笑顔を浮かべてそう告げるミラ。その事に反応してさらに強くミラの手を握るルドガー。彼は彼女に恋をしていた。初めは罪悪感から気にかけていたが徐々に彼女に惹かれ今は本心から彼女の事を想っている。
しかし、ずっと彼女の世界を壊してひとりぼっちにしてしまったことに罪の意識を抱いてその想いを伝えることは出来なかった。だからこそ、これが終わったら想いを告げようとしていた。だが、彼女が死んだら元も子もない。
一方の彼女もまた彼に恋をした。自分の世界を壊した張本人故に最初は憎んでいた。しかし、彼はどんなに憎まれ口をたたいても自分の傍に居てくれた。彼のアイボーと一緒に自分を“ミラ”として見てくれた。本気で自分の事を心配してくれた。生きていてくれと言ってくれた。
そして自分の事を彼のアイボーと同等、またはそれ以上に大切にしてくれている。痛い程に自分の手を握る彼の手がその証拠だ。そこまで分かった彼女にはもう迷いはなかった。なすべきことがなくてもいいと彼は言ってくれたが、自分は今なすべきことを見つけたのだ。自分の大切な者達を守る―――その命を賭して。
『―――――』
最後に彼にしか聞こえない言葉を残して彼女はその手を自分から振り解く。茫然とした表情の彼を見て少し心が痛んだが、これが自分のなすべきことなのだと自分の心を納得させる。そして痛い程に握られていたために彼の手形が残った手が不思議と嬉しかった。その温もりを最後まで感じていられる気がして。
『お願い! エルをっ!』
「うそ……ですよね」
暗い奈落の底へと落ちていくミラを見てアーシアが嘘であってほしいと呟く。他の者も余りにも残酷な現実に打ちのめされ、ただ、ミラが消えた穴を見る事しか出来ない。そして祐斗は思い出す。ルドガーがかつてリドウは俺から大切な人を奪った奴だと言っていたことを。それがこの場面なのだと分かりルドガーのこの時の心境を思いやる。
そんな時だった、突如として穴から青い光の波動が噴出してきてエルとリドウそしてルドガーを吹き飛ばす。そして、その中からある一人の女性が華麗に宙を舞い、地面へと舞い降りる。そして彼女の後ろには、ウンディーネ、イフリート、ノーム、
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