四十六話:君へと捧げる鎮魂歌
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全ての分史世界を消さなければ、遠からず浄化は破綻し魂のエネルギーは拡散し、負は濃縮されていくというのだ。そしてそのどちらかでも世界は滅んでしまうだろう。
『浄化が破綻するとどうなるの?』
『負から発生する猛毒―――瘴気が溢れ出すだろう』
そしてそれは、人間、精霊、双方の死を意味する。余りのスケールの大きさに若干現実味が湧かないまでも相当不味いという事をイッセーはなんとか理解する。そしてエリーゼが大精霊オリジンは、なんとかしてくれないのかと聞くが、その価値が人間にあるのかどうか試すのが、オリジンの審判なのだとミュゼに言われる。
『……つまり、カナンの地に辿り着き、審判に合格してみせるしかないわけだな』
『そして大精霊オリジンに願うのだ』
『すべての分史世界を消滅させてくれ、って』
それはつまり、全ての分史世界の人間を皆殺しにしてくれと願うという事だ。その事が分かった黒歌達は今更ながらにルドガーのやっている行動の重さを知る。しかし、だからといってルドガーは足を止めるわけにはいかない。エルと一緒にカナンの地に行くと、こわくても、つらくても、いっしょにがんばると約束したのだから。彼は足を止めない。
例え―――再び大切な何かを失う事になっても。
あれからヴェルから連絡があり、現在時空の狭間がかなり不安定になっており、最後の道標がある分史世界に進入可能なレベルに落ち着くまで、少し時間がかかると言われて準備が整うまで待つことになったルドガーは自宅に帰る。
そして、ミラを失ったショックが大きく、まだ精神が不安定なエルを寝かしつけて、ルルに子守を頼み自分はマンションの外の広場に行き、一人ベンチに座り黙って雲で隠れたために一つしか見えない月を見上げる。そんなルドガーの元に一人の女性が現れる。
『ルドガー……少し君に話したいことがあるのだが』
『……ジュードにでも俺の家の場所を聞いたのか?』
『もう一人の私を通して私は今まで君達を見てきた。その影響だ』
『そうか……それで話ってなんなんだ―――“ミラ”』
ルドガーは振り返ってミラ=マクスウェルを見る。彼女と同じ金色の髪、彼女と同じ輝くルビーのような瞳。彼女と瓜二つだ。しかし、彼の求めているミラではない。そんな当たり前の事実にルドガーの胸は締め付けられるように痛む。そして同時に彼女と同一視していない自分に安堵する。ミラはミラだったのだと。
『もう一人の私は君に伝えたいことがあった。それを伝えに―――』
刹那、ルドガーの双剣がミラ=マクスウェルの首に突き付けられる。そのことに思わず、ギャスパーが悲鳴を上げるがミラ=マクスウェルは眉ひとつ動かさずに、俯きながら剣を突きつけて来るルドガー見つめる
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