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第一章
邪剣
近頃話題になっていることがあった。それはある宝のことだ。
「何でもそれを持っていると誰にも負けないらしい」
「誰にも?」
「そう、誰にも負けないようになるそうだ」
酒場でも何処でもその話で持ちきりだった。それこそ街でも村でもだ。
「一度抜けばそれでな。ありとあらゆる相手を切ってしまうのだ」
「剣なのか」
「そうだ、剣だ」
その宝は剣なのだった。
「剣だ。それはベラドウナの森の奥深くの洞窟の一番奥にある」
「そうか。奥か」
「そこに突き刺さっているそうだ」
場所についても既にそこまでわかっているのだった。
「そこにな」
「ではそこに行けばその剣が手に入るのだな」
「そうらしい」
こう述べられるのだった。
「そして剣を手に入れればどんな相手でも倒せることができるのだ」
「どんな相手でもか」
「どんな英雄でも龍でもな」
「龍でも」
龍を倒せると聞いて心を動かされない者はいなかった。それを聞いて心を動かされない者はいなかった。それはまだ若い戦士のアーノルドも同じだった。
「そんなに凄い剣なのか」
「らしいな」
相棒の魔法使いであるクリスもその話を聞いていた。だから彼の言葉に応えるのだった。二人は今はある街の酒場で向かい合って酒を飲みつつ話をしている。
「本当に抜けばそれで一人でも大軍を相手にできるそうだ」
「大軍をか」
大軍と聞いてアーノルドはその逞しい腕を組んで考えに入った。
「龍も倒せるんだったな」
「とにかくな。無敵になるらしいぞ」
「それは凄いな」
あらためてそれに頷くアーノルドだった。
「それで場所は」
「ベラドウナの森の奥深くに」
クリスは場所についても述べた。痩せた顔にある緑の目が知的に光っている。
「どうする?」
「行くか」
アーノルドは考える顔でクリスに返した。
「森に。そして」
「剣を手に入れるのか」
「ああ。それでクリス」
己の決意を述べたうえで彼に対して問うた。
「御前はどうするんだ?」
「俺達は仲間だな」
「ああ」
「そういうことだ」
これがクリスの答えだった。
「一緒に行くさ。俺のその剣に興味がある」
「だからか」
「それだけ強力な剣だというのならな。是非見てみたい」
こうアーノルドに述べるのだった。
「是非な」
「よし、じゃあ決まりだな」
「ああ。しかしな」
お互い己の考えを述べて頷き逢ったところでクリスはふと考え込むのであった。そのうえでまたアーノルドに対して言うのである。
「おかしいな」
「おかしいって何がだ?」
「いや、何故だ」
彼は言うのだった。
「何故そこまでの剣が世に出ていないのかな」
「気になるのか」
「考えて
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