猟師と虎の仙人
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さの藁人形。とても一人でここまで持っては来れまい」
「はあ」
その通りであった。ここに来るまでも結構辛かったのだ。そんなものを持ってここまで来られる筈もなかった。
「じゃからわしが行こう。よいな」
「わかりました。しかし」
「場所がわからぬかと聞きたいのじゃな」
「はい」
流石は仙人であった。稽が何を話すのか事前にわかっていた。
「それは心配無用、わしは仙人じゃ」
彼は答えた。
「お主の家が何処にあるのか容易にわかる。それにそこまでもすぐ行ける」
「そうなのですか」
「うむ。だから心配無用、お主は家で今わしが言ったものを揃えるだけでよい」
「わかりました」
稽は頷いた。
「では行け。よいな、明日じゃぞ」
「はい」
こうして稽は仙人に言われた三つのものを家に帰るとすぐに揃えた。そして次の日を待った。
次の日の朝家の扉を叩く音がした。
「まさか」
彼はすぐに扉を開けた。するとそこに昨日の仙人が立っていた。
「あ、お早うございます」
「うん、、お早う」
彼は挨拶を返した。
「ところで準備はできておるか」
「あ、はい」
稽はその問いに答えた。
「もう出来ております」
そう言って彼を家の裏に案内した。丁度大きな木の下であった。
見れば血がたたえられた樽と絹、そして服を着せられた藁人形がある。彼はそれを見て満足そうに頷いた。
「よいぞ、よいぞ」
そして稽に顔を向けた。
「お主は素直な男じゃのう」
「そうでしょうか」
「うむ。絹も血も人形も本物じゃ。もしこれが一つでも偽りであったならばわしはお主をこの場で一呑みに平らげておった頃じゃ」
「一呑みですか」
「うむ。一口でな」
彼は笑いながらそう語った。
「じゃがどれも本物、ならば問題はない」
「はあ」
仙人は遠目で全てを見抜いていた。それから稽に語った。
「それでははじめるか」
「何をですか」
「お主の身代わりの儀式じゃ。まずは絹を持ってあの木の上に登れ」
「わかりました」
彼は言われるがまま上に登った。そして下を見下ろして仙人に問うた。
「これからどうするのでしょうか」
「次はその絹で身体を縛れ」
彼はそう命じた。
「強くな、木から落ちぬように」
「わかりました」
彼は頷いて言われるまま自身の身体を木にしっかりと縛りつけた。
「これでよろしいでしょうか」
「うむ、それでよい」
仙人は上を見上げてそう答えた。
「では次はわしじゃな」
彼はそう言うと右手を上げた。すると樽と人形が動き木の下に飛んだ。そして樽と人形がそこに置かれた。
「これでよし」
「はい」
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