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歪みすぎた聖杯戦争
7話 普通と異常もまた紙一重
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え覚えた。豹という獣は、あらゆる意味で彼の規範になるCOOLな生物だった。それ以来、龍之介は豹のイメージを自意識として持ち合わせるようになった。
つねに衣服のどこかには豹柄をあしらった。ジャケットやパンツ、靴や帽子、それが派手すぎるようなら靴下や下着、ハンカチや手袋の場合もあった。琥珀色の猫目石の指輪は、中指に嵌めないときでも常にポケットに入れておき、本物の豹の牙で作ったペンダントも肌身離さず持ち歩いた。
さて、そんな雨生龍之介という殺人鬼は、つい最近まで''モチベーションの低下''という由々しき事態に悩まされていた。かれこれ三十人あまりの犠牲者を餌食にしてきた彼だったが、ここにきて処刑や拷問の手口が、似たり寄ったりの新鮮味に欠けるものになってきたのである。すでに思いつく限りの手法を試し尽くしてしまった龍之介は、どんな獲物を嬲り、断末魔を見届けるのにも、もう以前ほどの感動や興奮を味わえなくなっていた。一つ原点に立ち戻ろうと思い立った龍之介はかれこれ五年ぶりになる実家に吉良と一緒に帰省し、両親が寝静まった深夜になってから裏庭にある土蔵に二人は踏み込んだ。

『龍之介…これが言ってた奴?』

吉良が指を差したそこにはミイラ化し、もはや誰かもわからない死体があった。

『あぁ〜、そっ、これがそうだよ。』

彼が最初の犠牲者を隠匿したのが、もはや家人たちにすら放棄されていた、その崩れかけの土層の中だったその死体こそ姉だった。五年ぶりに再会した姉は、姿形こそ変わり果てていたが、それでも龍之介が隠したそのままの場所で弟を待っていた。物言わぬ姉との対面は、しかし、これといった感慨ももたらさず、龍之介は無駄足だったかと落胆しかけたが、そのとき──

『龍之介この書物見てみなよ。』

吉良が蔵に詰め込まれたガラクタの山の中から、一冊の朽ちかけた古書を渡してきたのだ。薄い和綴じの、虫食いだらけのその本は、刷り物ではなく個人の手記だった。奥付には慶応二年とある。今から百年以上も昔、幕末期に記されたことになる。たまたま学生時代に漢書を齧ったことのある龍之介にとって、その手記を読み解くこと自体には何の苦もなかった。──が、その内容は理解に苦しんだ。細い筆文字で、とりとめもなく書き綴られていたのは、妖術がどうのという表記が散見されるあたり、どうやら西洋オカルトに関する記述らしい。異世界の悪魔に人身御供を捧げて式神を呼び出し云々というのだからもうまるっきり伝奇小説の世界である。吉良のスタンドだか超能力だかなら教えてもらっていたが、これはまた違う何故なら江戸の末期という時代において蘭学は異端ジャンル。その異端の中でもさらに最異端であるオカルトの書物となると、吉良の不思議な能力を目にして信じてもこれは少々度が過ぎている感もあったのだ。が、どのみち龍之介にとって、そ
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