6話 交叉する視点
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いる舞弥に呼びかける。
「舞弥、セイバーたちの北東方向、倉庫の屋根の上にランサーのマスターがいる。見えるか?」
『……いいえ。私の位置からは死角のようです。』
可能であれば、切嗣と舞弥との十字砲火で万全を期したかったのだが、あいにく攻撃可能なポジションにいるのは切嗣一人だけらしい。だが問題はない。距離は三百メートル弱。切嗣の腕前であれば確実に一撃で仕留められる。狙撃手の存在に勘付いていない以上、あの魔術師に・300ウィンチェスター・マグナム弾を防御する術はない。銃身上に備え付けられた二脚架を拡げ、狙撃体勢に入ろうとしたところで──切嗣は思い留まり、いったんワルサーの銃身を巡らせてデリッククレーンの上に狙いをつけた。
途端に、彼の段取りは根底から覆される。胸の内で舌打ちしながら、切嗣は再びインコムに囁きかけた。
「舞弥、クレーンの上だ……」
『……はい。こちらもいま視認しました。読み通りでしたね』
切嗣が暗視スコープで捕らえた人影は、舞弥のAUG突撃銃の照準装置にも捕捉されていたらしい。
切嗣と舞弥に続き、セイバーとランサーの死闘を覗き見る第三者の監視者が、いまデリッククレーンの操縦席に姿を見せていた。予期できた事態ではある。聖杯戦争の緒戦においては、積極的な対決よりもむしろ傍観が上策だ。堅実なマスターであれば、他のサーヴァントが戦闘に入っても決して嘴を突っ込まず、それでも抜かりなく監視にだけは馳せ参じるだろう。そして戦い末に、勝者が疲弊しきっていれば乱入して漁夫の利を攫うも良し。そう都合よく事が運ばなかったにしても敵の手の内を探ることはできる。
いの一番にセイバーたちの戦いの現場へと駆けつけた切嗣だったが、彼は観客が自分たちだけで終わるとは思わなかった。だからこそデリッククレーンという最良の監視ポイントをみすみす放棄し、後に現れるかもしれない新たな監視者のために、敢えてその場所を譲ったのである結果は見事に思惑通り。敵はデリッククレーンが見張られているとは露知らず、観戦に誂え向きな特等席を占拠して、結果、切嗣たちの前に姿を露呈させた。暗視スコープの薄緑の画像を、改めて切嗣は凝視する。
新たなる監視者の出で立ち……黄色の髪に碧眼。
ステータスを読み取るまで信じられなかったが、あれはアサシンのサーヴァントようだった。
アサシンで呼ばれるハサンの容姿を聞く限り明らかに違う、ではアレはハサンではない。
それでは何かのイレギュラーによる召喚か?だがそんな事今は問題ではない。
問題なのはデリッククレーンの上に陣取ったのがサーヴァントだという点である。
いま切嗣がランサーのマスターを狙撃すれば、まず間違いなく相手を即死に至らしめるだろう。
だが同時に、銃撃の位置はアサシンにも露見する。
アサシンは決し
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