7部分:第七章
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よいことだ」
彼にとってはそのことこそがまず重要であった。それを聞きその美しい顔を綻ばせる。
「まことにな」
「さすれば」
「うむ、私の腹はもう決まっていたが」
そしてまた述べる。
「武田家に。御館様に心からお仕えする。それが私の道だ」
「ではその道しかと歩まれますよう」
「うむ。してそなたは」
「私でございますか」
「どうするのだ?武田にお仕えするのか?それとも真田に」
「今のままでは同じことになると思いまするが」
「確かにな」
顔を綻ばせたままそれに頷く。真田が武田に仕えるということはそのまま彼も武田に仕えるということになるのである。
「どちらにお仕えしても。楽しきことになるでしょうな」
「ではまずは武田か」
「さて」
笑って言葉を誤魔化す。
「どちらでも同じならばより楽しき方を」
「真田は代々智謀の士だからのう」
「さすれど晴信様もまた」
「立派な方だぞ」
「ですから。悩むのでございます」
「ゆっくり考えればよいか」
源介は闇夜の中で明るく笑った。
「どちらにしろ楽しきことならな」
「そうですな。ではじっくりと考えさせて頂きます」
「ではまたな」
源介は別れの言葉をかけた。だが最後の別れではない。
「甲斐の館で会おうぞ」
「その時はまた」
「今度は戦さの場で」
「その御活躍、見せて頂きます」
「武田の為にな」
最後に爽やかに笑った。その美しい顔が夜の中に映える。
去っていく源介の後ろで管姫の館が燃え落ちていく。源介をそれを振り返ることなくそのまま甲斐へと帰っていくのであった。
毒婦 完
2006・8・26
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