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SAO−銀ノ月−
第椅子取話
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ているようなひよりを、直葉は無理やり病院の中へと引っ張っていく。

「ほら、ひよりさん……ちょっとレコン、手伝って!」

「う、うん」

「キリトさん……」

 そんなやり取りをしながら、萎びたひよりを直葉とレコンで運びながら、声は遠くなっていく。まあ、しばらくすれば復活するだろう。

「あー……ひよりにキリトがまだ帰ってない、って言ってなかったわね」

 どういう経緯かは分からないが、ひよりはキリトに憧れているらしく。SAO生還者の中で《黒の剣士》のことを知る者は多いので、それ自体はさほど驚くべきことではないのだが。

「あ! おーい! シリカちゃん!」

 ひよりショックから俺たちが回復するより早く、そんな女性の声とともに目の前にいたシリカが押し倒された。

「……えっ」

「ちょ、ちょっとエミさん、や、やめてくださいよ!」

 シリカの必死の抵抗が成果をみせたか、いきなりシリカに抱きついた女性――エミが「ごめんごめん」と謝りながら、シリカと立ち上がった。艶やかな黒髪と対照的な白い服が目を引く、歩いていたら何かにスカウトされそうな美人だった。

「リズにショウキくんもこんにちは! 今日はよろしくね!」

「ああ、わざわざありがとう」

 フランクな笑顔でエミが挨拶してくると、ログインする部屋などの説明を簡単に行っていく。その間に里香が、ニヤニヤと笑いながらエミへと問いかけた。

「彼氏は一緒に来てないの?」

「ふふ、なんとここまでデートしてきたの!」

 その里香の質問を、待ってましたとばかりにエミが太陽のような笑顔で答えた。最初っからやけにハイテンションだったのはこのためか、などと思って納得しそうになったものの、ある重大な問題に気づいてしまう。

「……そのマサキさんがいないですけど」

「え? だって一緒に来て……あれ?」

 そのデート相手がいないんですがそれは。シリカの鋭い質問に、エミはお相手がいないことに気づいたらしく、おそらくはマサキがいたのであろう自分の斜め後ろを確認していた。病院前にあった信号が赤になって車が止まるとともに、ゆっくりとYシャツ姿の線の細い少年が歩いてきていた。

「マサキくんどこ行ってたの?」

「……お前が走りだしたんだろ」

 要するに、シリカを襲いに行ったエミについて行けずにいたら、信号が赤になってしまったらしく。マサキは、あまり手入れされていない――いや、出かける直前に誰かが無理やり手入れしたような髪から、細い目で疲れたようにエミを見ていた。

「今日はよろしく頼む」

「ああ……こちらこそな」

「それじゃリズにショウキくん、私たち先に行ってるね! ……ごゆっくり」

 俺に部屋の説明を聞いていたエミの先
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