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毒婦
6部分:第六章
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だけで倒せぬ場合にはその双方を使う」
 彼女は言った。
「そういうことじゃ」
「狐と火か」
 しかも数はこれまでのものとは比較にならぬものであった。それが部屋に満ち至るところから源介に襲い掛かる。これまで二度の攻撃を退けてきた彼も今度ばかりは駄目であるように思われた。
「案ずることはないぞ」
 姫はその絶体絶命の源介に対して述べた。
「そなたはわらわが生き返らせてつかわすからな。わらわの婿として」
 目が青く不気味に光っていた。
「して共に天下を目指すのじゃ。よいな」
「この世で天下を治めるに足る御方は一人のみ」
 源介はその狐火達に囲まれながらも平然としていた。まだ肝は微動だにしてはいなかった。
「御館様のみ。他の者には天下は収まりきれぬわ」
「人には無理じゃ」
「否!」
 源介は強い声で姫の言葉を否定した。
「人ならばこそだ」
 それが彼の言葉であった。
「人ならばこそ天下を治めることができるのだ」
「世迷言を。今の乱れきった天下をどうして収めるというのか、人が」
「その乱れは人が起こしたもの、ならば人が収められるのは道理」
 そう反論する。
「魔物の入るものではない。いらぬ節介だ」
「節介と申すのならば今わらわを退けてみせよ」
 その言葉を耳にしても姫の余裕は変わりはしない。
「さすればそなたも人も認めてつかわす」
「認めてもらうことはない」
 彼はまた言い返した。
「何故なら。貴殿はここで倒すからだ」
「ではやってみせよ」
 源介を挑発するようにして述べる。
「わらわの狐火。防げるものならばな」
「それを防ぐこともない」
 源介の目が光った。
「ムッ!?」
「何故なら。貴殿ごとこの狐火も斬るからだ」
「殊勝な。これだけ取り囲まれてか」
 今度の笑みは嘲笑であった。
「肝が大きいのはよいがこれは」
「貴殿はさっき言ったな」
 源介の言葉はその嘲笑を退ける程の強さがあった。
「千年生きたと。それは確かに凄い」
「人には出来ぬことよな」
「それだけ生きたということはそれだけの力を身に着けられるということ。それで人が貴殿等に勝てることはない」
 まずはそれを認めた。
「しかしだ」
 だがすぐにそれを打ち消す。
「人はそれだけではない。人の命は短いがその実は何よりも濃いものだ」
「中身が違うとでも申すのか?」
「左様。そして今それを見せてやる」
 一斉に襲い掛かる狐火達。それに白刃が舞う。
「生憎それでは我が僕達を押さえることはできぬぞ」
「ではこれでどうか」
 源介は左右に動いた。身体が分かれる。
「一人で出来ぬのならば二人」
 源介は刀を振るいながら言う。それだけで白刃の数が倍になった。
「二人で出来ぬのなら三人。決してしのげぬものではない」

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