4部分:第四章
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その中に座るとこれからのことについて思案を巡らしはじめたのであった。
「まずは中に入ることができた」
最初の関門は潜り抜けた。
「だが」
それで終わりというわけにはいかない。むしろ大事なのはこれからであった。
「次は食事か」
おおよそどんな食事が出て来るのか予想はついていた。どういった料理が出るのかは問題ではなかった。ここで彼が予想していたのはその中にあるものである。それがあるのは間違いないとさえ思っていた。
「これに関しては」
もう考えがあった。それを実行に移そうとしたところで襖の向こうから声がしてきた。
「もし」
「はい」
中年の女の声であった。何処か嫌らしい響きがあった。
「食事を持って参りました」
「左様ですか」
「はい、どうぞ」
そして女中が食卓を持って入って来た。見れば声から思ったように嫌らしい雰囲気の中年の女であった。まるで何かを企んでいるような。そうした物腰であった。
「こちらです」
「ふむ」
見れば白い米に漬物、そして魚と野菜であった。中々いい食事であった。
「どうぞ召し上がれ」
「それでは」
橋を取り数口入れる。だがそれだけで食事を終えた。
「あら、もうですか」
「どうも腹が減っておりませんので」
苦笑いを作ってこう述べた。
「もう結構です」
「そうですか。ではこれで」
「済みませぬな」
「いえいえ、それならば仕方ありませんから」
片付ける女中の目が一瞬だが鋭く光った。彼はそれを見逃さなかった。
「では後で酒でも」
「すみませんな。ところで」
「はい」
ここで女中に声をかけた。
「厠は何処ですかな」
「それでしいたら廊下を出まして」
女中から厠の場所を聞く。それを聞くとすぐにそこへ向かった。
そしてその中で今しがた食べた僅かなものも吐き出した。念の為である。
「これで食事は抜けた」
食事には間違いなく毒が入っていた。女中の目の光がそれを教えていた。
だが。それで終わりではないのも女中の目は教えていたのだ。
「酒だな、次は」
酒を持って来ると言っていた。それに毒があるか何があるか。それが問題であった。
部屋に戻って暫くすると酒と肴が運ばれてきた。用意がいいことだと思った。
「なくなりましたら持って来ますので」
「なくなったらですか」
「はい。何でしたら一度に持って来ましょうか?」
「いや、それには及びませぬ」
この言葉から酒には毒はないことを読み取った。これを飲んで死ぬというのならかわりを持って来ることはないからだ。そして源介は。酒にはすこぶる強かった。彼はここでこの屋敷の異形の者達を試してやろうとさえ思った。
「ではなくなりましたら呼びますので」
「はい」
そして一人で濁った酒を飲みはじめた。それは案
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