2部分:第二章
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かった。
「そうか、その方がか」
「して貴方様は」
「私か」
「はい、お武家様とお見受けしますが」
「うむ、春日源介という」
「春日様というと確か御館様の」
「私を知っているのか」
「はい、近頃殿様のお側に仕えられる若い方でその様な方がおられると聞いておりまして」
「そうだったのか」
「それが貴方様でしたか、いやこれはまた」
大五郎は源介の顔をまじまじと眺めながらその年老いた顔を綻ばせてきた。
「お美しい。噂には聞き及んでいましたが」
「まあ今は私の顔のことはいい」
源介はその若く美しい顔に苦笑いを浮かべてその話題を止めさせた。
「実はな。御舘様に言われてな」
「といいますと」
大五郎の様子が変わった。何やら鋭い雰囲気になった。その変化に源介も気付いた。そして心の中で呟いた。
(この老人、意外と)
できると思った。その年老いた力ない様子は芝居であり実は中々の出来物であると呼んでいた。だがそれは口には出さなかった。それを胸に収めながら話を続けた。
「何か。この村であるそうだな」
「はい」
大五郎は鋭い目の光を隠して彼に応えた。
「それのことですが」
「そして村に入ったところで村人達から妙な話を聞いた」
「庄屋のことでしょうか」
「知っているか」
「この村のことでしたら。私は庄屋ですので」
剣呑なものさえそこには忍んでいた。そうした声と雰囲気をこの老人は潜ませていた。
「庄屋が二つあることですね」
「そうだ。何か心当たりがあるな」
「勿論です。ですがここでお話も何ですから」
大五郎はそう言って源介を上にあげた。そこで向かい合って座り話をはじめた。
「まあこれでも」
「かたじけない」
水が差し出された。それを飲みながら話に入る。
「近頃村では妙なことが続いております」
「左様か」
「はい、一年程前にここにふらりと歩き巫女と称する若い女が来まして」
「歩き巫女のう」
源介はそれを聞き更に怪しいと思った。歩き巫女の中には普通に巫女をしている者もいれば春もひさぐ者もおり時には密偵の仮の姿であったり妖かしの類であったりするのだ。そういうことを知っているからこそ怪しいと思ったのだ。
「はい、最初は占い等をして真面目にやっていましたが」
「春でもひさいだか」
「いえ、そんな生易しいものではございません」
大五郎はその皺だらけの顔を顰めさせて言った。
「何分美しい顔でして。言い寄る男もおりました」
「ふむ」
「そうした者は一旦はその巫女と一夜を共にするのですが翌日は」
「どうなっているのだ」
「仏になっております」
「どの者もか」
「はい、そのうちに巫女は男共の金やらを手に入れ何処からともなく招き寄せた得体の知れぬ者達を従え遂には村の端に大きな屋敷を構えまし
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