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魔法少女リリカルなのは ―全てを変えることができるなら―
第六話
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しまったらしい。
壁に損傷はないが、自分の体を痛めつける結果になってしまった。
それでも、耐えられなかった。
後悔と、自分に対しての怒りに、耐え切れなかったのだ。
未来に待ち受ける結末を知っているにも関わらず、ティアナを変えることができなかった。
力尽くで止めるべきなのだろうか。
だが、それでは余計に反発させてしまう。
他にどんな言葉をかけてあげればいいのか、朝我には分からなかった。
全てを知っていても、結局何もできなかった。
それがあまりに悔しかった。
それはまるで、未来で待ち受ける結末すらも、変えられないと言われたような気がしたからだ。
「くそ……くそぉ!!」
二度、三度……何度も壁に右拳を打ち付けた。
何度も、何度も――――。
「――――ダメだよ、朝我」
右手首を、柔らかな感触と温もりが包み、勢いを止めた。
それと同時に隣から聞き覚えのある女性の声がした朝我は、冷静さを取り戻しながらそちらの方を向いた。
「フェイ……ト」
そこにいたのは、今にも泣き出しそうな顔で心配するフェイトだった。
「そんなことしたら、右手……使えなくなっちゃうよ」
そう言いながらフェイトはゆっくりと手を伸ばし、彼の右拳を両手で包み込んだ。
朝我の全身から怒りと共に力が抜け、同時に右手に強烈な痛みが走った。
「ごめん、心配かけた」
「ううん……心配かけるのも、かけられるのも、慣れてるから」
優しく微笑みながら、フェイトは朝我の右手を自分の胸に当てた。
「ちょ、フェイト……!?」
突如右手に伝わる、今までに感じたことのない弾力と心臓の鼓動。
痛みと混じり合って何とも言い難い感覚にとらわれ、顔が熱を帯びていく。
「朝我がどんな想いでそうしているのか知らないけど、私はずっと……朝我のこと、心配に思ってるから」
「……」
恥ずかしさのあまり、手を離そうと思った朝我だが、自然とその力も抜けていった。
気づけば先ほどまで思考と胸を支配していた怒りや後悔は消えて、冷静さを取り戻していた。
「何があったのか、今回は話してくれないかな?
今回のこと、だけで良いから」
「……わかった」
今回のことだけなら、と朝我は自分に言い訳をした。
本当は聞いて欲しくて堪らなかった。
一人で背負い切るには限界があって、背負い切るには、きっと右手が使い物にならないといけなかっただろう。
そう思うと、自然と心は素直になっていた。
朝我とフェイトはその場に座り、フェイトはポケットから消毒液と絆創膏を取り出して朝我の右手の治療を始めた。
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