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土蔵
5部分:第五章
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第五章

「お父もおっ母も厳しくて怖くて」
「口煩くてね」
「いつもがみがみ言って」
 子供の親に対する感情を見せて話すのだった。野原を駆けたり川で遊びながらだ。
「そんなのだから。鬱陶しいとさえ思ってたけれどな」
「子供の頃あったんだな」
「俺達と同じなんだな」
「それで今こうして」
「一緒に遊べるんだ」
 このことにだ。気付いたのだった。そしてだ。
 親達、今は子供になっている彼等もだ。こう言うのだった。
「何かこいつ等が子供だった頃思い出すよな」
「ああ、今までは俺達が子供だった頃のことしか思い出していなかったけれど」
「それでもな。今こうしてこいつ等と遊んでいたら」
「あの頃のこと思い出すよな」
「よくこいつ等とこうして遊んだな」
「そうだよな」
 彼等はこうしたことを思うのだった。そしてだ。
 お互いに思うことを思いながら遊んでだ。楽しい時間を過ごすのだった。
 そんな彼等を自分も入って遊びながらだ。庄屋は見て話すのだった。
「これが土蔵の中じゃ」
「こんな楽しい場所だったんだな」
「そうだったんだ」
「そうじゃ。だから子供は入られなかったのじゃ」
 そうだったというのだ。
「子供になる場所だからのう」
「そういうことだったんだな」
「それでこうしてだったんだな」
「入るのは大人になってから」
「成程ね」
「そうじゃ。そしてじゃ」
 それでだとだ。庄屋はさらに話すのだった。
「こうした場所だからじゃ。誰にもな」
「言ったらいけなかったんだな」
「そうだったんだな」
「そうじゃあんた達もじゃ」
 そのだ。彼等にしてもだというのだ。
「絶対に言ってはならんぞ」
「この村の子供達にはだね」
「言ったら駄目なんだな」
「私達がそうだった様に」
「大人になれば皆ここに来る」
 このだ。春の村、子供になる場所にだというのだ。
「その時になれば楽しめるからのう」
「そうなんだね。それじゃあ」
「俺達の子供が大人になったら」
「こうして一緒に遊ぼうか」
「皆で」
「そうするのじゃ。それではじゃ」
 ここまで話してだ。庄屋は彼等に今度はこう話した。
「ここで楽しくやろうぞ」
「またここに来ていいよな」
「そうしていいよな」
「勿論じゃ。皆で楽しもうぞ」
 こうしてだった。彼等は庄屋や自分の親達、彼等と同じく子供になった大人達と共に楽しく遊ぶのだった。それは時々行われるのだった。
 そして自分の子供達、生まれてきた彼等を見てだ。温かい目で呟くのだった。
「何時かこいつ等ともあの土蔵の中で」
「子供になって楽しく遊ぼうか」
「そうしようか」
 こう呟いてだ。その時が来ることをだ。あえて言わないで楽しみに待つのであった。


土蔵   完


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