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猫の憂鬱
第4章
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憎青山涼子は絵に集中している、自分が見なければ放置されると思ったのだろう。
「まあ、其れもあるけど、ね?」
タキガワはニヤニヤ笑い、知ってるんでしょ?と顔を寄せた。
「涼子が受け継いだ莫大な財産…」
「…成る程。」
「涼子は絵と猫にしか興味ねぇ女だったから、金に関心が無いのな。…判るよね?」
妥協したのだ、タキガワセイジは、青山涼子が相続した莫大な財産に。良くある、金持ちな奥様が夫の愛人関係に金で目を瞑る、此れが逆になった。タキガワセイジは我が物のように財産を使う代わりに、青山涼子の不貞も目を瞑り、白人との息子でも可愛がった。
「ポルシェで事故ったの。買って一年以内の。」
「マジで…、勿体ねぇ…」
「ねえ。」
井上とタキガワは意気投合し合う様に頷いた。
「兄貴の事故は、マジで事故だよ。細工無し、アル中の自爆。事件性無し。」
「其の後、の事なんですが。」
青山涼子の息子の事故死である。
夫のタキガワセイジの交通事故も息子の事故死も、何にも情報が無い。此れ等二つの事件が発覚したのは時一と雪村の証言である。
国内での事件なら当時の担当刑事に聞けば良いが、なんせ場所はドイツである。大掛かりな事件だったらドイツ当局に話し聞く事も出来るが、此の事件もドイツの事件も、地方紙に載る位の事件でしかない。
聞くには、小さ過ぎる事件なのだ。
「青山涼子女史は、御子息が亡くなった時、夫が殺した、と喚いてらっしゃいますよね?」
「うん。」
「然し、実際の主人は前の年に亡くなっている…、此れはどういう事なんです?」
「知らねぇよ、大方、そん時の男の事なんじゃねぇの?」
「そうでしょうか。」
手帳から一枚の写真を取り出した龍太郎はタキガワに其れを見せた。
「此れ、何の植物か判りますか?」
渡された写真をタキガワは受け取り、はっきり云った、此れはトリカブト、と。
「トリカブト…、御存知ですね?」
「嗚呼。」
「そして、青山女史が好きだったのは、ヨモギモチ……」
普段、捲し立てるように話す龍太郎は、ゆっくりとした口調で言葉を発した。
「白人の方が、果たして、蓬餅を、知ってるでしょうか?」
「知ってる白人だって居るよ。外国人一寸馬鹿にしてね?あんただって、バームクーヘン位知ってるだろうが。」
「ええ、実物はね?けれど、作り方は?日本人の私達ですら知らないのが多いですよ。実際私は知らない。一人の刑事に至っては、蓬の葉すら知らなかった。唯の葉っぱ、そう、答えたんです。そして雪村氏も、蓬の葉を知らなかった。けれど貴方は、一発で此れがトリカブトだと判った。何故です?」
釣り上がる三白眼の目にタキガワは煙草を咥えた儘なのも忘れ、見返した。
「俺を、疑ってんの。」
「いいえ?疑問なだけです。」
落ちた灰、其れを井上が目で追った。
「貴
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