暁 〜小説投稿サイト〜
猫の憂鬱
第4章
―2―
[1/4]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「涼子の子供、の、父親、ねぇ。」
井上の問いにタキガワは頬を掻き、俺が候補なの?と反対に聞いて来た。
「青山涼子に関わってる男が御前位しかいねぇんだよ。」
「嗚呼、其れってかなりゴーインね、刑事さん。」
「なぁんか、御前、知ってそうだな。」
「そうねぇ、会員だった、って事は教えとくわ。」
くつくつタキガワは笑い、地面に灰を落とした。
「ま、なんでも話すよ、俺。涼子嫌いだし。」
嫌いな癖に葬儀に来るのか、と思ったが、憎い奴の葬儀に態々出向く物好きも居る。死に顔見て笑ってやろう、という思いである。
「じゃ、行こっか。」
「え、何処に。」
「何処って、喫茶店で話聞いちゃうの?署に行こうよ。」
タキガワの最もな返しに、何方が警察なんだか、我乍ら呆れた。
「拓也、帰るぞ。」
焼香から戻った龍太郎は、何とも言えない井上の表情に、タキガワを見た。
「署迄来てくれるって、タキガワ。」
「涼子の事話しゃ良いんだろう?全部話しちゃう。」
「だって。」
十分の間で何が起こったのか、龍太郎は深くなる眉間の皺に触れた。
井上、威圧感が全く無いタイプと云って良い、此れが刑事だと玄関先に現れても先ず恐怖は感じない、手帳見せられても納得いかない雰囲気で、其れが、井上の強みでもあった。
タキガワが証明したように、勝手に着いて来る。そして、勝手に話す。
タキガワは、実際なんでもかんでも話した。青山涼子の前夫である兄のセイジとの馴れ初めから、ドイツでの活動、日本に帰国してからの事、本人かと思う位詳しく話した。
「兄貴と結婚した時も、なんか腹に抱えてる女だな、とは思ってたよ。」
「頭が痛くなって来た。」
胃はもれなく痛い。聞けば聞く程、痛くなった。
井上の、破天荒な女、は明確だった。
最初の結婚、此れには子供が居た、なんというか、制御心が無いのか自由なのか、其れは知らないが、タキガワセイジは立派な日本人である、生粋の日本人で一滴も他の血は混ざらない、なのに、青山涼子が生んだのは、如何にもな白人とのハーフ顔の男児だった。性に奔放な井上も唖然とした。
「兄貴、アル中だったんだわ。」
「そらアル中にもなるわ…」
「飲酒運転で事故ったって知ってるよな?」
「一応、聞いては居ます。」
「アル中なんだぜ、事故るわ。ずーっと酒飲んでんの。甥っ子には、其れはまあ、救いだな、兄貴、根が子供好きだったし、可愛がっては居たよ。」
「良かった…」
タキガワの言葉に一番安堵したのは、子供好きの井上だった。此れでタキガワセイジから虐待受けていたとなると、うっかり蓬餅食べて死ぬわで、子供が報われない。
青山涼子が憎くて堪らなかっただろう、タキガワセイジは。雪村みたくさっさと離婚してしまえば良いもの、しなかったのは弟であるタキガワが言うように子供が好きだから、生
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ