第142話 孫家の現状
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てっきり隠密で視察に来たのかと思っておりました」
美羽は頭を振ると正宗に言った。
「人材集めが主目的であるが視察も兼ねていると思うがな」
「そうですね」
美羽も神妙な表情で頷いた。
「兄様は孫仲謀の件をどうなさるおつもりなのです? 人材を紹介されるのですか?」
「ないな。私に何の益もない。孫仲謀はまだしも。孫文台と孫伯符、この両名と係るだけで私の寿命が縮みそうだ」
正宗は虚空を見つめ憮然とした表情で言った。
「兄様の口振りでは孫仲謀はなかなかの人物なのでしょうか?」
美羽が尋ねてきた。
「なかなか見処はある。人物も信用できる。だが信頼はできない」
正宗は為政者然とした私情を交えない表情で美羽を見た。
「『信用できるが信頼できない』でございますか?」
美羽は正宗の言葉に要領を得ない様子だった。
「孫仲謀とは付き合いは数日と短く私の人物評は不正確かもしれないが、私の見立てでは孫仲謀は律義者と見て間違いないだろう」
「律義者でございますか。惜しいですのじゃ。孫文台の娘でなければ是非に士官の誘いをしたかもしれません」
美羽は本当に残念そうな憂いを帯びた表情になった。
「美羽、孫仲謀は確かに律義者だ。しかし、孫仲謀が優先すべきは当然だが孫家。この私が孫仲謀に恩を売ったところで、ひとたび私と孫家が相争う事態に陥るようなことがあれば、あやつは私を裏切る公算が高い。私への恩を感じようと孫家への私情を捨てきれまい。それに孫家は荊州で敵が多すぎる。武力を養い荊州全土を掌握しようという野心を隠していない。あまりに危険すぎる」
正宗は美羽に自分の忌憚ない意見を述べた。
「兄様が孫家を警戒される理由はよくわかります。妾も孫文台には心を許してはならないと思っております。そして、孫文台の気質を色濃く引き継いでいる孫伯符も同じく心を許してはなりません。あの二人を懐に招くということは虎狼を家の中に招くようなものです」
美羽が正宗の意見に対して意見を述べた。
「現状、余程のことがない限り、孫家とは距離を置かざるおえない」
「ですが孫仲謀は諦めるのでしょうか? わざわざ兄様が働く店でごり押しで働くことになった彼女の強引な性格を鑑みるに諦めるとは到底思えません」
先ほどまで正宗と美羽の会話を傍観していた渚が口を開いた。
「諦めないだろうな」
正宗は日中の会話した孫権のことを思い出したのか心底うんざりしたように言った。
「名前を名乗ったのは軽率でしたが士大夫であれば名を問われれば名乗らぬ訳にはいかない。孫仲謀の少々強引な手法は孫文台や孫伯符に通じるものがあります」
美羽は孫権の行動に些か怒りを覚えているようだった。正宗は王の爵位にあ
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