第二百話 青と黒その七
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「如何に上杉の軍勢といえども弾に当たれば死ぬ」
「そして弓矢に当たれば」
「さすれば」
中川と蜂屋が佐久間に応える、二人は佐久間の下にいるのだ。この戦においては。
「如何にあの者達といえどですな」
「死にますな」
「案ずることはない」
それで、というのだ。
「だからじゃ」
「はい、それでは」
「順番になればですな」
「撃つ」
「射るだけですな」
「そうじゃ、槍で防ぎつつな」
織田家の誇る長槍でだ、この長槍を前に出すだけで敵兵は進めず軍勢にとってかなりの守りになっているのだ。
「そうするぞ」
「ですな、飯を食い」
「そのうえで」
「飯はある」
またこう言った佐久間だった。
「たらふく食えるから安心せよ」
「ではこうして食い」
「そのうえで」
二人も応えてだ、そしてだった。
彼等は順次飯を食い水を飲んでいた、それは上杉も同じで。
北条高広も飯を食いだ、己が率いる兵達に言っていた。
「戦は食ってこそじゃ」
「そのうえで、ですな」
「働けますな」
「そうじゃ、だからじゃ」
それでというのだ。
「食え、水も飲め」
「はい、わかっています」
「食っています」
「食ってそしてですな」
「また動きそのうえで」
「攻めて、ですな」
「戦うのじゃ」
戦の中での言葉だ、織田の軍勢と同じく。
「この戦、勝つぞ」
「我等が負ける筈がありませぬな」
「例え織田家が相手でも」
「如何に敵の数が多くとも」
「それでもですな」
「そうじゃ、勝てる」
間違いなく、というのだ。
「だから食え」
「食って力をつけ」
「戦うのですな」
「そうじゃ、とにかく食うのじゃ」
その飯をというのだ。
「さもなければ話にならぬわ」
「この戦、長引くやも知れませぬな」
旗本の一人が北条に言った。
「下手をしますと」
「うむ、織田も退かぬ」
「思ったより粘りますな」
「伊達に武田を破った訳ではないな」
「それなりの強さですな」
「うむ、弱くはない」
織田家は弱兵と呼ばれている、しかしというのだ。
「率いる者達がよいわ」
「手取川の時と同じく」
「あの時もな、率いる者はよくな」
「それに、ですな」
「鉄砲も弓矢も多い」
「あの時よりも遥かに増えております」
旗本は冷静に言うのだった、戦の中でも。
「ですから余計に」
「強いな」
「中々崩れませぬな」
「手取川でも崩れなかったが」
「ここでもでしょうか」
「いや、崩れぬ軍勢はじゃ」
それはというと。
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