ターン20 鉄砲水と冥府の姫と
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帰ろっか、夢想」
「ねえ、清明。その前に少しだけ付き合ってくれる、だって」
「?」
どこか寂しそうな顔の夢想によくわからないながら黙ってついていく。駅の裏手に回り、そのまま少し進む。
「ここは……」
「ごめんね、変なところに付きあわせて。でも、ここに来たらどうしても寄りたかったの、ってさ」
そこは、小さな墓地。ささやかなスペースにいくつかのお墓が立ち並んではいるが、周りに生えた木のおかげでうまいこと電車に乗っているときには見えないようになっている。
その中の1つ、特に目立つわけでもないごく普通の墓の前に立ち、夢想が静かに手を合わせる。年月のためかややかすれた表面にはなんとか見えるぐらいの字で河風家之一族、と彫られていた。
なんとなく空気を読んで僕も手を合わせること10数秒、夢想がゆっくりと口を開いた。
「ねえ、清明。私の喋りかたって、清明はおかしいと思う?ってさ」
「え?」
「お願い、正直に答えて。って」
いきなりの質問に虚を突かれる。だからだろうか、それとも墓地という空間のよくわからない空気に呑まれたのか。割と正直に思うところを話していた。
「そりゃまあ、最初はそうも思ったさ。でも入学してからかれこれ1年以上たって、もうすっかりそんなのどうでもよくなったよ。どういう喋りかただろうと、何を考えていても、それ全部ひっくるめての夢想だからね」
ちなみに今のセリフを一言にまとめると慣れた、である。でもちょっとぐらいカッコつけた言い回しにしてもいいじゃない、どうせ他には誰も聞いてないんだし。
そんな答えを聞いた夢想はほんの少し笑って、それからまた真剣な顔にもどった。
「私のお父さんとお母さんは、今ここにいるの。私が物心ついてすぐのことだから、もう二人の声も覚えてないけどね、だって」
「えっと………」
なんて言えばいいのかわからない。物心ついた時にはもう母親がいない、という点では僕と同じだけど、それでも僕には親父がいた。口も性格も悪いけど、商売を仕込んでくれたりもした。結局何も気の利いたことが言えないまま口を閉じると、それを待っていたかのようなタイミングでまた話し始める。
「交通事故だったんだけど、その時の車には私も乗ってたの、って。今でもぼんやり覚えてるんだ、その時の感覚は。それで、それから一か月ぐらい、私は喋ることができなくなったの。お医者さんは事故のショックだって言ってたけど、だって」
僕の母親が死んだときはどうだっただろうか。あの親父が泣いてるのを見たのは、後にも先にも事故の知らせを受け取ったその時だけだ。それだけしか覚えてない。
「ここから先の話は信じてもらえないかもしれないけど、最後まで聞いてね、だって。その時に私は、声
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