第四十話 大阪の華その八
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「あまりな」
「喜べないのですね」
「最下位じゃないだけましだけれどな」
「巨人が最下位ですからね」
「ああ、もう指定席になってるからな」
遂に全人類の悲願が達成されたのだ、巨人は見事万年最下位になったのである。
「だから最下位じゃないけれどな」
「それでもですか」
「優勝出来るのかね、横浜」
溜息混じりの言葉である。
「実際に」
「そのことは」
「言えないよな」
「はい、私は阪神ファンですから」
桜は少し微妙な笑顔になって薊に答えた。
「どうしても」
「前に優勝した時ってな」
一九九八年の三十八年ぶりの優勝のことだ。
「あたしが生まれた頃だよ」
「その頃ですよね」
「ああ、もうそれこそな」
「だからですね」
「はっきりと観たいよ」
横浜のその優勝をというのだ。
「何時かは」
「ご自身の目で、ですね」
「そうだよ、胴上げ観たいよ」
切実な言葉だった。
「ここじゃあまり横浜ファンの人いないだろうけれどな」
「ええ、もうそれこそ殆どの人がね」
裕香は関西全域のことから話した。
「阪神ファンよ」
「だよな、やっぱり」
「神奈川は違うのね」
「巨人ファンもいるんだよ」
横浜ファンだけでなく、というのだ。
「横浜だけじゃなくてさ」
「そこが関西と違うのね」
「ああ、どうもな」
薊はその首を少し傾げさせながら裕香に答えた。
「パリーグはバラバラで」
「西武とかロッテとか?」
「千葉はロッテみたいだけれどさ」
パリーグは、というのだ。
「けれど神奈川はバラバラだよ」
「そうなのね」
「他のチームに比べて地域色が少ないんだよ、横浜は」
「阪神みたいに」
「広島、ソフトバンク、楽天、日本ハムとかさ」
薊はこうした地域密着型球団の名前も挙げていった。
「そうしたチームとは違うんだよ」
「そのことが残念なの?」
「やっぱり神奈川人なら横浜だよな」
薊はかなりダイレクトに地域色を出していた。
「巨人は論外でさ」
「まあ巨人はね」
「あんなチーム人気が出たら駄目だろ」
「悪いことばかりしているからね、巨人は」
巨人の様な悪徳の権化と言うべき存在が持て囃されてきたことに戦後日本の正義の喪失、倫理観の荒廃が出ている。巨人の歴史を知れば巨人を好きになる筈がない。巨人とは何か、邪悪そのものなのである。
「あんなチームはね」
「人気が出たら駄目だよ」
「今ファンがどんどん他球団に流れてるわね」
「観客動員数も最下位だろ」
「実際の順位もそうでね」
「いいことだな」
「そうね、日本がよくなってきているのね」
裕香はこのことをいいこととして言った。
「まさに」
「だよな、あたしあのオーナー嫌いだったんだよ」
「老害よね」
「
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