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IF物語 ベルセルク編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二十三話 決戦前
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がエルウィン・ヨーゼフはヴァレンシュタインを嫌っていない。むしろ何処かで頼りにしている。

「子供なりに色々と考えているようです。以前の様に癇癪を起す事も無くなりました」
私が答えるとヴァレンシュタインは無言で頷いた。この内乱で甥は変わった。いやもしかすると変わったのではなく苦しんでいるのかもしれない。オーディンのクーデター騒動でグリューネワルト伯爵夫人、リヒテンラーデ公、その他大勢が死んだ時、非常にショックを受けていた。

自分の知る人間が殺されたという事が幼児には衝撃だったようだ。通商破壊作戦で貴族達が死んだ事も影響しているだろう。子供らしさが消えているような気がする。何処か目の前の青年に似ていると思った。この青年も十代の前半で両親を殺されていた、衝撃だっただろう……。

「苦しんでいるのかもしれません」
妹も私の懸念を口に出した。口調には憐みが有ったがヴァレンシュタインは無言で頷いただけだった。やはり感情が見えない。兵達は彼をビスク・ドールと呼んでいる。上手い事を言うものだ。

「良い皇帝になると思われますか?」
思いがけない質問だった。エルウィン・ヨーゼフを皇帝として認めるという事だろうか? 彼を廃しエリザベート、ザビーネを女帝にするとは考えていないのだろうか? 妹を見たが彼女も驚いている。

「御息女を皇帝にしたいと御考えですか?」
「いいえ、そうは思いません。皇帝の地位が如何に危ういか、今では私も妹も良く分かっています。先帝陛下は寵愛していた伯爵夫人に殺されました」
「ですが夫達が如何思うか……、それに貴族達が……」
妹が溜息を吐いた。

「皇帝も貴族も平民も命は一つ、そして失えば死」
嘲笑、……ヴァレンシュタインの言葉には嘲笑が混じっていると感じた。妹は唇を噛み締めている。だが彼の言う通りだ。命は一つしかなく失えば死は平等に訪れる。今回の内乱で誰もがそれを肝に銘じただろう。身分がどうであれ所詮は人間に過ぎないと……。そして目の前の青年は今頃気付いたのかと嗤っている。

「御安心を、御二方には既にお話ししました。ブラウンシュバイク公爵家、リッテンハイム侯爵家は帝国の藩屏としてゴールデンバウム王朝を支えていく、ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯はそのように御考えです」
思わず妹と顔を見合わせていた。私達だけではない、夫達も……。ホッとした。これ以上争わずに済む。そして思った、目の前の青年が説得したのだと。

「それに今回の内乱で貴族達はその多くが戦死しました。生き残った貴族も敗戦で力を失っています。ブラウンシュバイク公爵家、リッテンハイム侯爵家が手を結べば反対は出来ません。不満を言う様なら潰せば良い」
気負いはない、平静な口調だがヒヤリとするものを感じた。

目の前にチップが置かれた。二つ、
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