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第一章
土蔵
岡山のだ。ある村の話だ。
その村の庄屋の家には土蔵が幾つもある。その土蔵はどれも見事なものだ。
しかしだ。その土蔵の一つにだ。
村人達は度々集りその中に入り何かをしていた。そうしている親達を見てだ。
村の子供達はだ。怪訝な顔になってこう話すのだった。
「昨日お父達また土蔵に入ったよな」
「ああ、おっ母達もな」
「それで何してるんだ?」
「よくわからないな」
こうだ。彼等はこう話すのだった。
「庄屋さんの土蔵に何かあるの?」
「まさかお化けがいるとか?」
「それでお化けの言うことを聞いている?」
「それか神様がいるとか?」
彼等はまずは土蔵に妖怪か神がいるのかと思った。そうしたことから考えていくのは子供としてよくあることだった。それは自然のことと言えた。
その中でだ。彼等はだ。次にこう考えたのだった。
「土蔵の中で遊んでる?」
「あの土蔵の中で?」
「そうしてる?」
「そうしてるんじゃないの?」
こう考えたのだった。次はだ。
「それで時々あの中に入ってるんじゃないの?」
「それなのかな」
「それで入ってるのかな」
「一体何なんだろ」
誰もが疑問に思うことだった。
「あそこに何があるのかな」
「わからないよな」
「子供は入ったら駄目だっていうし」
「それなら何があるのかな」
「入るのは大人になってからっていうし」
「大人になったらわかることみたいだけれど」
しかしだ。それもだった。
「けれどそれも。誰も何も言わないから」
「お父もおっ母も何も言わないし」
「聞いても嫌な顔するよな」
「じゃあ一体何なんだろ」
「訳がわからないよ」
子供達はこう話すだけだった。彼等はさっぱり訳がわからなかった。そしてだ。
その子供達が大きくなってだ。高校を卒業した時にだ。
村の村長、その庄屋でもある彼にだ。こう告げられたのだった。
「おめえ達も十八になったからな」
こうだ。村の公民館に集められて話をされるのだった。
「じゃあうちに来い」
「うちに?」
「庄屋さんの家に?」
「そうだ。わしの家に来い」
こうだ。その小柄な白髪の老人が言うのだ。
「そうしろ」
「お酒を飲ましてくれるのかい?」
一人がこう言った。
「それをかい?」
「ああ、酒もある」
庄屋は酒についてもそうだと話した。
「しかしだ」
「しかし?」
「しかしって?」
「酒だけじゃない」
そうだというのだ。酒だけではないというのだ。
「酒だけじゃなくてな」
「御馳走もあるんだ」
「それも」
「そうだ。それもある」
こう話すのだった。
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