第九話:亡霊の王
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ユメの目で追えたのは、亡霊王が鎌を少し動かしたその初動だけ。しかし次の瞬間には、ユメのソードスキルは大鎌の柄に防がれていた。
あり得ない反射スピードに、的確すぎる防御。間違いなく、ユメがこれまで遭遇した敵の中で最強だ。
「マズハ一人」
死神からの宣告は、それ即ち死を意味する。突進技を完全に防がれたユメに、抵抗の動きは取れない。
槍ごと体を大きく弾かれ、宙へ踊る。
既に死神の鎌は振り上げられている。後はもう、ユメ目掛けて鎌を降ろすだけ。意志のないシステムに、慈悲などは存在している筈もない。
「ーーーあ」
鎌が、振り下ろされた。
† †
錆びれた刃が迫る。
スローモーションに動く世界に、ユメの思考はフル回転を始める。過去から現在、その全ての記憶が、彼女の頭の中を過ぎ去っていく。
行かないでと手を伸ばした。一人になりたくないと涙を流した。それでも、その手はなにかを掴むことなく、涙はただ床を濡らしただけ。
一人は怖い。暗い部屋に一人でずっといると、自分が何なのか分からなくなるのだ。自分が自分を認識できない、私って誰だろう、そんな感情が湧き上がってくる。
嫌だ。
死んだら一人だ。
一人は嫌だ。
「……行かないで…」
零れ落ちた言葉は、ナニカを切り裂く音に掻き消された。
「ぐっ……!」
音が聞こえる。温もりを感じる。何故だろうか、自分は死神に斬り裂かれて死んだのではなかったのか。
目を開いてみる。
痛みを堪えている、苦痛に歪んだ顔。いつも自分を励ましてくれた、彼の顔。
「剣よ!」
抱き締める腕に力が篭る。彼の周囲に現れた無数の剣軍が、死神に向けて掃射された。
幾ら驚異的な反射速度を持っていようと、無数の剣弾の嵐を捌ききる事は不可能だ。ゆっくりと、しかし確実に減っていくHPゲージを確認して、レンはそのまま亡霊王に背を向けた。
かつてない程の全力疾走で向かうのは、ほど近い場所にあるあの扉。先程あの扉の向こうの部屋に入った時、その空間のみが圏内だということを確認していたからこその判断だ。
鍛え上げられた筋力とスピードを以ってすれば、ユメ一人を抱えたまま百メートルの距離を走破する事は容易い。
辿り着いた扉に手を掛けて、一度レンが亡霊王に目を向けた。
「ぐっ…!?」
刹那、容赦ない一撃がレンを切り裂いた。霞む程の速さの斬撃は、この世界で最もレベルの高いレンのHPですら一撃で半分以上削ってみせた。
「レン!?」
それでも抵抗しようとした所で、体が動かない事に気づく。
間違いなく麻痺毒による硬直状態。更に、猛毒がレンのHPをじ
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