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ソードアート・オンライン 少年と贖罪の剣
第九話:亡霊の王
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 だが、レンはユメを連れて行くことにした。

 本人が大丈夫だと言ったのだ。ユメの普段はおちゃらけているが、キチンと自分の言葉には責任を持つ。それに、大丈夫ではなくなったら守ればいいのだ。いつも通り、この剣と体で。

「さあ、行くぞ」

 神の盾は、例えどんな存在が敵であろうと万人を守る。



† †



 白亜の尖塔の内部は、月光に照らされた墓地であった。
 微かな光しか届かない空間には、無造作に建てられた墓石に、壁に掘られた十字架といったとてもではないが縁起がいいとは言えないものばかりがある。

「…それに、この扉は……」

 その中で唯一、壁そのものを切り取ったように作られた扉がレンの目を引いた。
 どうやら引き戸になっているようで、扉を開いてみると、そこはなにもない空間であった。

「…さて、これはどういう意味なのか。ユメ………ユメ?」

 問いかけた相手から返事は来ず。しかしその代わりに、レンのコートに伸ばされた手が震えていた。

「おい、ユメ…だいーー」

 「大丈夫か」と問いかけようとした矢先、突如空間の中央に赤光が走った。
 身の危険を感じたレンは、咄嗟にユメの前に出ると、体一つ覆ってしまう程の大きさの盾を取り出し、構える。
 その直後、吹き飛びそうになる程の衝撃が、盾の向こうから襲ってきた。

「ぐッ……!?」

 激しい火花に、耳を劈く金属音。それらが舞い散り響き渡る空間に、()()は現れた。

「死、神……」

 ユメが呆然と呟いたその先、錆び付いた長大な鎌を握り、その身を漆黒のローブで覆った異形がいた。

「亡霊王か…! まさかボス級とはな」

 表示された敵の名は
 『the king of death ghoul』。
 間違いなく、今回の標的であった。

「我ガ財ヲ狙イシ者ヨ。汝、ソノ身ヲ以テ強サヲ示セ」

 底冷えするような零度の声が、戦いを求めてくる。本能的な恐怖に竦みそうになるが、すぐに持ち前の精神力でその恐怖を克服したレンは、大鎌の一振りを防ぎきった盾をしまい、その手に十字架の剣を握った。

「おい、ユメ…っ!?」

 しかしそれより早く、両手に愛用の槍を握ったユメがレンを追い越した。
 マトモな精神状態ではない彼女を前に出す訳には行かないと、レンも慌てて後を追う。

「はぁぁぁぁあッ!」

 槍ソードスキル『ソニック・チャージ』。システムアシストによる突進から渾身の突きを繰り出す一撃に重点を置いた、ユメが最も信頼を寄せたソードスキル。
 槍に淡いペールブルーの輝きが灯り、次の瞬間には爆発的な加速で以って、亡霊王の胴体を貫くーーー

 ーーーはずだった。

「そんな…っ!?」

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