第九話:亡霊の王
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絶光の廃墟街。
そう名付けられたフィールドに立つは二人の男女。相対するは、無数の骨騎士。
「チッ、数が多い!」
銀色の外套が翻り、放たれた絶剣が骨で作られた騎士の頭蓋骨を斬りとばす。
今ので一体何体目だろうか。そろそろ気色の悪い顔を見るのは飽きてきたが。
「セヤァッ!」
いつものおちゃらけた雰囲気から一転、攻略組トッププレイヤーも顔負けの気迫で撃ち出された一突きが、一体を貫通して後ろにいた二体目ごと貫いた。その怯んだ二体は、向こう側にいるレンの一薙ぎでその身を散らした。
「面倒だ。一掃する!」
主の号令により顕現するは無限の剣。それらが、包囲するように立っている骨騎士の全てを穿った。
凄まじい速度で放たれた剣は銃弾のそれと遜色ない。人ですら躱せぬ弾丸を、動きが鈍重な骨騎士が回避できるはずもなく、レンとユメを取り囲んでいた約十体はみるみる内に消滅していった。
「ふぅ…メインストリートに踏み込んだだけでこれか……」
「でも一体一体のレベルはそんなに高い訳ではないよね」
今回、レンとユメに発生しているイベントは二つ。
一つは、ユメが持ってきたレア武器獲得クエストである『虚光の骨騎士』。単純に、先程のボーンナイトを五十体倒せという比較的ポピュラーなものだ。
もう一つは、先程の少女NPCによって齎されたイベント。絶光の廃墟街のどこかにいるという亡霊王に奪われた剣を取り返すという少し珍しいタイプのもので、これは報酬がなんなのかすら分からない未知のクエストである。
まず先にどちらのイベントから片付けるか思案していたレン達であったが、標的が自ら出向いてきたため、現在はボーンナイト討伐を優先に進めている。
既にレンは二十体、ユメは十体の討伐を終えている。こちらのイベントの達成は、時間の問題であった。
しかし。
「…この地区に入ってから、全然出てこなくなったね」
「ああ。それに、あの建物…」
全く現れなくなったボーンナイトに、そこだけが世界とは隔絶されているかのように屹立する白亜の塔。
「怪しいね」
「怪しいな」
傷がない場所が見当たらない程に荒れていた街の中。そんな中で、目の前に聳え立つこの塔だけがまるで建てられたばかりのような様相であった。怪しくないはずがない。
「…亡霊王がこの中にいる可能性が高いな。どうする、行くか?」
「え、あ、うん……そうだね、行こう」
相変わらずユメの様子はおかしいままだ。挙動不審なのに加えて、本人は気づいていないだろうが体が小刻みに震えている。
普通ならば、彼女は連れて行くべきではないのだろう。
「そうか。いきなり戦闘が始まるかもしれん。用意しておけ」
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