3部分:第三章
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する」
そのことはだ。もう決めたというのだ。
「ここで一人で生きていく」
「そうするか」
「ではな。おそらくもう会うことはない」
さとりは自分から別れの言葉を言ってきた。そして腰をあげてだ。
吉兵衛に顔を向けてだ。寂しい声で告げた。
「わしは一人でいたいのだからな」
「そうするか。ではわしはだ」
「御主は?」
「もうここには来ないようにしよう」
そのさとりを見上げて言う。彼はまだ腰を下ろしてそのうえで兎の肉を食べている。そうしながらさとりに対して言葉を返したのである。
「あんたが人と会いたくないというのならな」
「済まないな。それではだ」
「お別れだな」
「さらばだ」
こう最後の言葉を交えさせてだ。さとりは吉兵衛の前から消えたのだった。吉兵衛は兎を食べ終えると火を消してその場を離れ別の場所で寝た。それから里に帰った。そしてそれからこの辺りに入ることはしなかった。さとりは一人山の奥に入り人と会うことはしなかった。最早彼がそこにいることを知る者もいないしそこに入る者もいない。そしてそのこと自体がだ。さとりの望んだことだったのだ。
さとり 完
2011・5・23
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