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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第23話 消え逝った願い
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そう云う風に生きたくて。でもそうなれない自分が嫌いでしかたありませんでした。」
「そうか。」
「もしも……私が、そういう風に成れていたら忠亮さんはどうしました?」
目標がある事は悪いことではない。
だが、憧れが強すぎればそれは自分自身を塗り潰す毒でしかない。唯依は掛けられた期待と重責と目指すべき目標、なまじ周囲の期待に応えんと自分を抑圧し過ぎてしまったのだ。
「――お前が唯依という一人の女を殺してもその魂までは殺せない。偽物の
仮面
(
じぶん
)
を作って他人を演じても、その仮面の裏には絶対にお前がいる。
なら、その檻をぶち壊してお前を引きずり出してやるさ。そこに是非なんぞあるものか。」
やると決めたのならやるだけだ、其処からはどうやるかだけだ。他に問答する余地は一片たりとも存在するはずが無い。
唯依の華奢な躰を抱き寄せる。軍務で鍛えているとはいえ少女の肉体である唯依の体は柔らかで小さい。
「強引なんですから。それじゃあ私に選択権なんて無いじゃないですか。」
「ま、そういう事だ。諦めろ―――だからお前はお前のままでいろ。」
片腕の中で唯依がどこか可笑し気に言う、それに対し無理に誰かに成ろうとしなくて良いと口にする。
自分だけの人生なのだ、たった一つの掛け替えのない人生だ。
それを他人になる事だけに注力してどうする、報われないし意味がない、徒労だ。
自分は自分以外の何者にも成れないし、自分で自分を否定する事は自殺に近い意味を持つ。
「よく今まで頑張ったな、偉いぞ。」
「―――っ…う、あ」
片腕の抱擁の中で唯依の華奢な躰が小さく震える。そして押し堪えた嗚咽が聞こえてくる。
彼女と彼女の周囲の人間は、唯依が唯依らしく生きることを肯定した事はなかったのだろう。
そんな中で唯依は周囲の期待に応え、篁家を見下した者たちに対し見返すという復讐を果たそうとした。
公私の私を殺し、必死に自分を磨いてきた。
だが、それは真面目なのだが『実際の自分以上』のことをしようとしているため結局は、実りのない人生だ。
唯依は今までの人生で充実を感じたことはないだろう。
満たされるはずが無いのだ。
自分に出来た事よりも、出来ない事の方が目について―――やってきたことを認めてあげられないのだ。
故に、彼女はその代価の大きさに気付けない。
―――幸せ、それを感じ取れるかどうかは心にその能力が有るかどうかで決まる。
唯依という少女は頑張っている内に失ってしまったのだ。
幸福を純粋に幸福と感じる能力を失ってしまったのだ。
そうなってしまって尚、周囲の期待に応えんと、自分の理想像を自分に投影して自分を削ってしまう―――機械の部品が摩耗するかのよう
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