第十四章 水都市の聖女
第九話 巨人殺し
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ンガンドの防御力は格段に落ちる。
大量の落石やら土砂には、耐えられない。
「これで、二手」
大きく抉れた虎街道を挟む崖の上。そこに立つ褐色の肌を持つ赤髪の少女が紅を差した口元を歪めて笑うと、歌うように呟いた。
大量の土砂がヨルムンガンドを押し潰し、辺りにもうもうと土煙が漂う。虎街道から数十メートルは上にある崖の上にまでも土煙は上がっていた。赤髪の少女―――キュルケがいる崖とは逆の崖の上に立つタバサが、身の丈はある大きな節くれだった杖をひと振りする。
風が一陣。土煙を吹き飛ばす。
吹き散らされた土煙の先には、虎街道の出口を塞ぐように小高い丘が生まれていた。
「…………」
虎街道を形作る峡谷の上に隠れていた兵士たちからどっと歓声が沸く中、崩落により作り上げた丘を見下ろしていたタバサが、不意に杖を握る手に力を込めた。
タバサの口から呪文が紡がれ、頭上に巨大な氷の槍が作られていく。巨大な氷の槍を作りながら、タバサは唐突に呪文を唱え始めたタバサに戸惑う様子を見せる聖堂騎士たちに目で合図する。聖堂騎士の面々が戸惑いながらも、事前に決められていた魔法を使うため一斉に呪文を唱え出す。
一人一人の呪文が複雑に絡み合い歌の調べとなる。
賛美歌詠唱―――そう呼ばれる魔法であった。
聖堂騎士たちが握る聖杖の先から伸びた炎の竜巻が絡み合い、一本の巨大な炎の竜巻となり―――最終的に巨大な竜となった。
ガラリと、丘の頂上から石が転がり落ち―――土砂が吹き飛んだ。
飛び出す二体の巨大な影。
向かう先に虎街道の出口―――そこに一人立つルイズの姿。
土煙の中に浮かび上がる駆ける二つの人影に向かって、タバサは杖を振り下ろす。
それを合図に崖の上から様々な魔法が乱れ飛ぶ。
氷の槍が、炎の竜が、その他にも様々な魔法が崖下の騎士人形へと襲いかかる。魔法による重点爆撃を受けるヨルムンガンド。
常時であれば無傷とはいかなくとも十分に耐えられただろうその攻撃を、しかし“反射”を解除されたヨルムンガンドは耐え切れない。
魔力切れを考えない魔法の乱れ打ち。
土砂に押しつぶされずに生き残ったヨルムンガンドも、命運を切らし。
「―――チェック」
崩れ落ちた。
ゆっくりと杖を下ろすタバサ。
視線は崖下。
崩れた丘と、砕けた二体のヨルムンガンドの残骸。
薄霧のように漂っていた土煙が薄く消えていき、動きのない様子に安堵の息をタバサが吐いた―――瞬間。
「―――ッ!?」
両足が砕け倒れ伏していたヨルムンガンドが、残った両腕を使い這ってルイズに向かっていく。幼児が這うような姿でありながら、その速度は異様な程に速い。蟲のように這いずるその姿は、中途半端に人の姿を保って
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