第十四章 水都市の聖女
第九話 巨人殺し
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「―――っチィ」
鋭い舌打ちが響く。殺ったとの思いが先行し、騎士人形の足を緩めてしまっていたのだ。気づいた時に既に遅く、視線を虎街道の出口へと向かう四つの影が見えた。その速度は格段に落ちてはいたが、離された距離は出口までに追いつくことは不可能であった。
「―――来た」
目を閉じたままルイズがポツリと呟く。
足裏に感じていた振動は、今や身体全体を揺らす程に大きくなっている。地面を砕く音に混じって風を切る音が微かに混じっていた。
うっすらと開いた瞳に映るのは小さな点。
それが次第に大きくなる。
背後には巨大な騎士人形が後を追いかけていた。
地響きが次第に大きくなる。
騎士人形の数は十。
じわりと疲労に似た焦りが胸から湧き出す。
それを押し殺すように不敵な笑みを口元に浮かべた。
杖を握った右手をゆっくりと掲げる。
既に“虚無”の詠唱は終了している。
「一発で―――決めるッ!!」
ルイズの腕が振り下ろせれ、“虎街道”の出入口に迫るヨルムンガンドたちへ向かって、完成した虚無魔法が発動する。白い小さな光がヨルムンガンドの集団の中央に発生し、次第に大きくなっていく。一気に膨れ上がった光は十体のヨルムンガンドを全て覆い尽くす。
“虚無魔法”の光がヨルムンガンドを包み込む光景を目にし、ルイズの拳に思わず力が入る。
「……まず、一手」
眩い程の輝きを見せていた光が溶けるように消えた後には、虎街道の出口に立つ無傷のヨルムンガンドの姿。
険しい顔でヨルムンガンドを睨み付けるルイズ。すると、視線に誘われるように一体のヨルムンガンドが前に進み出る。
『お久しぶり、と言っておきましょうかトリステインの“虚無”。随分と下品なエスコートで招かれたと思ったらとんだ歓迎ね』
ヨルムンガンドから向けられる女の声に、杖で肩を叩きながらルイズは不敵な笑みを返す。
「あら? お気に召さなかったかしら」
『残念なことにね。で、歓迎の挨拶はこれだけ? なら、そろそろお礼をしないとね』
シェフィールドを肩に乗せたヨルムンガンドが前に進み出る。
反射的にルイズが杖を前に構える。
「無駄よ。このヨルムンガンドが前と同じと思わないことね。装甲はエルフの技術で“カウンター”を“焼き入れ”を施しているし、その更に下にも装甲がある。だから例え表面の“カウンター”を破る手段を手にしたとしても、その下にまで攻撃は届かないわ」
「そう、“カウンター”が掛けられているのは一番上の装甲だけ―――なら」
「何……笑ってるのかしら?」
シェフィールドの言葉の通りルイズの口元には笑みが浮かんでいた。
それは追い詰められた者が浮かべるような自嘲の笑みや、破れかぶ
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