第十四章 水都市の聖女
第九話 巨人殺し
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りまき飛び続ける少年たちは、それでも追いかけてくる騎士人形の肩に乗るシェフィールドに向かって罵声を浴びせながらも、未だ姿を見せない遥か遠くにある“虎街道”の出口に向かっていた。
「ッ―――見えたっ!?」
出口に向かって飛ぶ四人の最後尾。殿を務めるギーシュの口から歓喜の声が上がる。閉じられた峡谷の向こうに光が見えたのだ。その声に押されるように、皆の速度がグンっと上がる。
あと少し。
もう少し。
少しでも速くと伸ばされる手。
誰の目にも峡谷の入り口がハッキリと目に見え、自然と口元に笑みが浮かび―――
―――ッドォオッ!!
「「「「―――ッ!!?」」」」
―――同時に隙も生まれた。
細かい榴弾が、空を飛ぶ四人の後方の空間を薙ぎ払う。
葡萄弾の名の通り葡萄の様な鉄の粒一つ一つが高速で空間を引き裂き、発生した衝撃が空を飛ぶ四人の背中を強打する。不意の衝撃に四人は地面へと引きずり落とされた。しかし、地面に叩き付けられる直前―――文字通り血の滲むような鍛錬により反射的にレイナールたちは受身を取る。ゴロゴロとコンクリート並に硬く乾いた地面を土埃を立てながら転がっていき。
「―――ギーシュッ!?」
レイナールの悲鳴染みた声が響く。
爆発は四人の後方。その間近で発生した。そして殿を務めていたのはギーシュだった。火薬と土煙に混じって微かに混じる血の匂い。レイナールは血の気の引いた青ざめた顔で振り返った。
「っ、ぶ、無事だっ!! それよりも足を止めるなっ、このままじゃ追いつかれる」
よろよろと立ち上がるギーシュの身体は血と埃で汚れている。榴弾に肉を食い破られながらも受身は取ったのだろう。弾に貫かれ身体に空いた穴から血は流れているが、墜落による怪我はないようだ。しかし、それでも重症に当たる怪我を負っている。それでもギーシュの目は力を失っていない。重症を負いながらも欠片も戦う意志を無くさないギーシュの姿に、レイナールは頼もしげに頬を緩め―――
「―――ギムリィッッ!!!」
―――ギーシュの背後に迫る騎士人形の一体が大砲を向ける姿を目にしギムリの名を叫ぶ。
「―――雄々羅あああああぁぁぁッ!!」
レイナールの叫び―――その叫びに込められた意図を察し、猛々しい咆哮にも似た応答と共にギムリが硬く握り締めた拳を地面に叩きつけた。
紙一重で砲撃の音よりも先に大地が盛り上がる音が響く。幅五十センチを超える石壁が水精霊騎士隊を覆うように囲み、石壁がギーシュたちの姿を完全に覆い隠す。榴弾が石壁にめり込み―――一瞬の間を置き砕けた。
騎士人形の肩の上。シェフィールドの口元に笑みが浮かぶ。が、それは直ぐに憎々しい歪みへと変わる。
砕けた石壁の向こうには何もなかったからだ
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