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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
49.大地の静寂
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は水流を操る能力。これでこの眷獣は真の力を発揮する。
地上から噴き出した水は、まるで何かの意思でも持っているように猿の眷獣の周りへと集結していく。
邪魔だと言わんばかりに両手を振り回して水を吹き飛ばす。しかしまとわりつく水はどれだけ振り払われようと再び集結するだけだ。
「これでどうや!」
海原が叫ぶと
一角獣
(
ユニコーン
)
も同時に咆哮。するとまとわりついていた水が先端を鋭く尖らせた杭のような形状へと変化していく。その数は何十、いや何百という数にまで膨れ上がった。
そして容赦なく数百の杭は猿の眷獣へと突き刺さっていく。毛むくじゃらの肉体はもちろん鎧までも一瞬で突き刺さる。
今までとは違う咆哮が猿の口から漏れた。それは悲鳴だ。
「いまや、緒河!」
「はい!」
彩斗は悲鳴を苦痛に暴れる猿の元まで全力で駆ける。
海原の作戦をここでようやく彩斗は理解した。水は電気を通しやすい。その状態で先ほどの落雷が直撃すれば一撃で相手を鎮めることができるかもしれない。
再び、先ほどの雷が出現するかどうかはわからない。もしかすると先ほどのはたまたま本物の落雷が落ちてきただけかもしれない。いくら伝説の吸血鬼だとしても人間と同じように自然現象には勝つことができない。
そんな悪い考えが頭をよぎった瞬間だった。最後の悪足?きと言わんばかりにこれまで以上に大地が激しく震える。
この街そのものを崩壊でもさせる気なのだろう。
「そんなことさせっかよ!」
彩斗は長剣を後方へと引き絞ると猿の眷獣へと力任せに投げた。全力で投げられた長剣が銀色の輝きを放ちながら膝の辺りへと突き刺さった。
パキッ、という何かが折れたような音を耳が捉えたのとほぼ同時に彩斗の視界は異様な現象を目の当たりにした。
先ほどまで暴れまわっていた猿の眷獣が、地上から噴き出し続けていた大量の水が、戦いによってボロボロになっていた建物の全てが凍結しているのだった。まるでこの空間だけ時が止められたかのように全てを氷が支配していた。
「な……」
声を出すことも出来なかった。こんな現象を彩斗がやったのだというのだろうか。いや、彩斗はこんな力を持っていない。ならば、他の誰かがやったということだろうか。
すると目の前で十メートルを超える氷の塊がまるで何もなかったかのように消滅していく。
「どうやら、元の魔力に戻ったみたいやな」
呆然としている彩斗に対して海原は冷静な口調で呟いて歩みを進めていく。彼が向かう先には、先ほど魔力の中心にいた白いコートを着ている女性が力なく倒れていた。
そして彼女の近くまで行ったかと思うと黒のジャンバーの内ポケットから銀色に輝くものを取り出した。それは十五センチくらいの小さな刃物だ。手術などで使うメス
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