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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
49.大地の静寂
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簡単にやられたのだ。
「あれは、“
神意の暁
(
オリスブラッド
)
”の眷獣……」
少女の怯えた声が漏れる。体が小刻みに震えている。それもそのはずだろう。普通の人間ならあんなものを見れば恐怖に身を震わすのは当たり前だ。獅子王機関という組織がなんなのかはわからないが人民の救助を行っているところを見ると普通の人よりは耐性があるはずだ。そんな少女がこれほど恐怖するということはやはり“
神意の暁
(
オリスブラッド
)
”は普通の吸血鬼とは逸脱した存在なのだと改めて思い知らされる。
むしろこの状況で少しでも冷静でいられている彩斗の方が異常なのかもしれない。
すると
一角獣
(
ユニコーン
)
は元の魔力へと返っていった。
「あ、あなたは逃げてください」
少女は金属製の銀色の長剣を背中から抜き取った。それは黒髪の少女が持っていた刀とはまた別の物のようだ。
しかしこの長剣にも吸血鬼に対抗するための力はあるはずだ。
突如として長身の猿の眷獣が咆哮する。すると民家を優に超えるような高さの土色の津波が出現した。いや、あれは大地の津波だ。それに
一角獣
(
ユニコーン
)
が出現した場所へとめがけて迫っている。
このままでは彼はあれに飲み込まれる。
たとえ不老不死の吸血鬼と言えどもあんなものが直撃すればひとたまりもない。
「悪い、ちょっと借りるぞ!」
彩斗は考えるよりも早く少女が持っていた銀色の長剣を奪い取って走り出した。
「え!? ちょ、ちょっとキミ!?」
少女の驚いた声が聞こえたが気にせずに津波へと向かっていく。
幸か不幸かそこに先ほどの地震で海原がいると思われる道を遮っていた建物が倒壊して瓦礫がまるで階段のようになっていた。地面に落下している瓦礫が崩れることなど考えずに勢いをつけて蹴り上げた。その時にようやく向こう側の道路の壁によって遮られた光景が見えた。迫り来る津波の前にツンツン頭の黒髪の青年の姿を確認した。
彩斗は勢いを残したまま地面へと着地する。骨が軋む衝撃が足へとダイレクトに伝わってくる。
その時には土色の津波はほとんど目の前まで接近してきていた。
───どうやって止める?
考えもなく突っ込んできたわけではないが、今思えば、この長剣で津波を止められる保証はない。
「……これはただの媒体だ」
自然と漏れた言葉。またこの感覚だ。彩斗ではない彩斗がそれを教えてくれる。長剣は体内の魔力引き出すための媒体でしかない。
それならば、彩斗はごくわずかな魔力しか存在しない。媒体としてこの世界に魔力を放出しても微量なものだ。
しかしそれでもやるしかない。わずかでもいい。迫り来る津波の威力を抑えることができれば勝機が開けるかもしれない。
彩斗は銀色の長剣を頭上まで振り上げる。そして迫り
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