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真夏のアルプス
第5話 本性
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緩い当たりがポテンヒットになった事に、やや落胆気味に足を緩めた守備陣は、ベンチからの声にドキッとした。振り向くと、修斗が一塁を回って2塁に向かっていた。その加速には何のためらいもない。結局、打球を処理したレフトは2塁に送る事さえできなかった。


「オラァ!何を気抜いとるんだ!」


相手校の監督が、緩慢な守備陣に怒号を発する。


「まぐれ当たりにしてはよくやったぞ!」
「つまらんヒットをツーベースにするとは、がめつい奴だな!」
「お前の根性に相応しい薄汚れたヒットだぞ!」


日新ベンチからの野次はそれ以上に大きく、散々な言われようの修斗は2塁ベース上で、「何で打ったのに文句言われてんだ俺は!」とカッカしていた。


「……ダラけた守備に気を取られて、誰も気づいてない」


広樹は、ちょっと異質な自軍ベンチの盛り上がりに乗っかることも無く、相変わらずブツブツつぶやきながら、ネクストへと向かう。


「今の二塁への加速、メチャクチャ速かったのにな」


広樹が2塁へと視線をやると、ベンチからの野次に負けじと言い返している、無邪気な修斗の姿が。それを見て、広樹は呆れたように息をついた。


「……ま、こんな毒虫の長所なんて、気づいてやる必要もないんだが」


季節は6月に入ろうかという所。高校生活は足早に過ぎていく。

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