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真夏のアルプス
第5話 本性
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、今日のところはお疲れさん。次の回から早川がいく」


呆れ顔の長谷川監督に、修斗は意気消沈した。ブルペンでは、日新中等部の元エース、1年の早川がビュンビュンとピッチを上げて投球練習している。それを見ると悔しかった。今日の醜態で、一歩遅れをとってしまった。


「はい……」


落胆して、ベンチ裏に引っ込んでダウンを始めようとする修斗。その肩を長谷川監督は咄嗟に掴んだ。


「おい、どこに行くつもりだ?」
「は、はぁ……」


突然の事にキョトンとする修斗。長谷川監督は無表情で、バッターボックスを指差した。


「次の回から早川が行くとは言った。だが、代打を送るとは言ってない。この回の先頭はお前だ。さぁ、さっさと行ってこい」
「は、はい!」


慌ててヘルメットを被り、バットを手にとって修斗は打席へと走った。その後ろ姿を相変わらずのニヤけ面で見送りながら、広樹が呟いた。


「……点取られるの分かってて、先発させましたね」
「……まぁな」


長谷川監督は、広樹に言われても表情一つ変えない。広樹はクククと、嫌らしい引き笑いを見せた。


「奴の本性には、とっくに気づいていらっしゃるのに。好きですよ、そういう所」
「お前の好き嫌いなんぞ、俺は一切問題にしとらん」
「そうですね。自分のような卑屈さと、聞き分けのないガキに効果的に話を聞かせる知恵とは、無関係の事ですからね」
「……たわけ」


呆れたように言った長谷川の口元は、しかし先ほどに比べて幾分緩んでいた。



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(……バッティングかぁ。高校入ってからあんまやってなかったんだよなぁ。バットも全然振ってないし。うわ、硬式バットって重たっ)


右打席に立った修斗は、初めてちゃんと握った硬式バットの感触に目を丸くしつつ、相手投手投球を待つ。唐突に命じられた打席だが、戸惑ってばかりもいられない。


(……せめてバッティングだけでもいいとこ見せたいよなぁ)


修斗は投球の不甲斐なさの汚名返上とばかりに、初球からガンガン食らいつく。しかし相手バッテリーも、力みが見える修斗の様子を察知していたのか、緩い変化球で打ち気を逸らしてきた。


(ちょっ、初球から変化球かよ!)


ストレートのタイミングでフルスイングしようとしていた修斗の腰は砕け、小手先だけでボールを迎えにいく形になった。咄嗟に右膝をつきながら、全身を沈み込ませた。


コキッ!


引っ掛けたフライは、しかしフラフラとサードの後方へ。ショートが追うが、レフト線にポトリと落ちてしまった。


「!?」
「セカン!セカン!」


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