四十四話:守るべき大切な者
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』
岩から飛び降り、優しげな雰囲気を漂わせていた顔を一変させ厳しいものにするユリウス。そんな様子にルドガーとミラは身構える。
『もう時計の問題じゃない。あの娘……エルを俺に渡してくれ』
『危ない趣味ね』
ミラがそんなことを言うがユリウスが漂わせる雰囲気から勿論そんな理由でないことは分かっている。ルドガーはユリウスが求めているのはエルの力であるクルスニクの鍵の事だと判断する。
『拒否すれば、力づくで奪う』
鋭い眼光でそう言い放つユリウスからは強烈な殺気が放たれている。そのことに怯みそうになるルドガーだったが覚悟を決め、双剣を構える。
『ルドガー……なぜ、あの娘にこだわる?』
『約束したんだ。一緒にカナンの地に行くって』
『やめろっ! 誰にとっても不幸な結果になるぞ!』
ルドガーがカナンの地に行くと伝えると冷静だった口調を荒げてそれを止めようとするユリウス。そのあまりの変わりようにユリウスはルドガーの知らないカナンの地の真実を知っているのではないかとミラと第三者であるリアスは考える。
『何を知っているの、あなた?』
『オリジンの審判の非情さを、だ……わかってくれ、ルドガー! 俺はお前を―――』
必死でルドガーが未だ知ることのない何かから遠ざけようとするユリウス。その様子からは彼が弟をその何かから守ろうとしているように見える。そして最後の説得の言葉を続けていた時だった。
『きゃあああああっ!』
『この声は、エル!?』
突如としてエルの悲鳴が響き渡る。ルドガー達がすぐさまエルの元に駆けつけると海岸には禍々しい姿をした時歪の因子の魔物ともがき苦しむエルを必死に治療するエリーゼがいた。
魔物はルドガー達に攻撃を仕掛けた後、姿を透明に変えその場から消えてしまった。ミュゼはエルの容体を一目見て呪霊術という生き物の命を腐らせる精霊術がエルにかけられたのだと見抜く。さらにその術を解くには術者である魔物、時歪の因子である海瀑幻魔を倒すしかないとないと言う情報もルドガーに告げる。
『正史世界では絶滅した変異種。姿を隠して呪霊術で獲物を襲い、動かなくなった後、その血をすする魔物よ』
その魔物にこれからエルが殺されてしまうのかとゾッとするルドガー。そしてだんだんと虫の息になっていくエルを見ながら必死に状況を打破する解決策を考え続けていく。そして、ついにその解決策を思いつく。
『俺があいつを誘き出す!』
『はぁ、どうやって?』
『こうする!』
剣を取り出し、自らの左腕に当て戸惑いなくその身を切り裂くルドガー。その突然の自虐行為にエリーゼが声を上げ、黒
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