四十四話:守るべき大切な者
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け!』
ルドガーを追っていくミラにルドガーが優しいと言う。それに対して頬を赤らめて顔を逸らしながらルドガーにそう言うミラだったが仕草と表情から照れ隠しにしか見えない。その様子に笑うルドガーに気づき歩きながらも文句を言い続けるミラだったが向かった先に岩場に腰掛け鼻歌を歌うユリウスを発見して文句を言うのをやめる。
『余裕ね。追われているのに鼻歌なんか歌って』
『クセなんだよ。我が家に伝わる古い歌でね。会いたくて仕方ない相手への想いが込められた“証の歌”と言うらしいが……本当に、会いたい人が来た』
まるで口説き文句の様な台詞をすらすらと口にしながらルドガーを優しいまなざしで見つめる。しかし、相手がユリウスファンクラブの女性なら嬉しさで卒倒してしまうようなセリフと行動にもルドガーはこんなセリフは日常茶飯事だとばかりに平然と受け止める。
『兄さんは、その歌好きだよな』
『それは、お前の方だろ』
ユリウスは懐かしそうに笑いながらルドガーの知られざる過去話を暴露していく。
『赤ん坊の頃から、これを歌ってやるとすぐ機嫌がなおった』
赤ん坊の頃の話を聞かされて、なおかつそれをミラに聞かれてしまった事に、思わず顔を赤らめて恥ずかしがるルドガー。ミラはそんなルドガーに先程の仕返しとばかりに意地悪気な顔でルドガーに笑いかけてルドガーの羞恥心をさらに煽る。おまけにこの事を未来の仲間にも知られたことを彼はどう思うだろうか。
そんな恥ずかしい過去話だが、実は赤ん坊の頃にはユリウスとは会ったことすらなかったことをルドガーは知らない。いや、正確には記憶にふたをしているのだがそれが思い出されることは恐らくはこれからもないだろう。そしてユリウスがなぜこのような嘘をついたのかは謎だ。
ただ単に五歳のルドガーを赤ん坊と言い表したのか、ルドガーに辛い記憶を呼び覚まさせないための配慮なのか、それとも自分自身がどこにでもいる兄弟だとそう信じていたかったのか……答えはユリウス自身にも分からないのかもしれない。
『覚えているか? 子供の頃、キャンプに行った山で、二人そろって迷子になったこと。雷はなるわ、熊は出るわ、大変だったな。……けど、俺がこれを歌うと、お前は泣きたいのを我慢して歩き続けた。俺がおぶってやるって言っても、自分で歩くって意地はってな。一晩中歩いて麓の村に戻った時には、足も喉も、ボロボロだったけ』
そんな昔話にルドガーは懐かしそうに思いをはせる。そしてそんな様子を見ていた小猫はずっと自分を子ども扱いしていたルドガーが子供らしかったことに親近感を覚え、全部終わったらこれをネタにいじってやろうと考えた。
『そんな話がしたいわけじゃないんでしょ?』
『もちろん要件は別にある
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