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蜃気楼
2部分:第二章

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第二章

「朦朧としてるね」
「下の方が消えてますし」
「蜃気楼としか思えないね」
「ですから無視しましょう」
「いや」
 ところがだ。浩昭はだ。
 ここでだ。強い声になってこう麻耶に言った。
「あそこに行こう」
「えっ、蜃気楼にですか?」
「そうだ、行こう」
 こう麻耶に言うのである。
「あの蜃気楼のところにね」
「あの、蜃気楼ですよ」
 麻耶は怪訝な顔になってだ。そのうえで浩昭に問い返した。
「それでもですか?」
「それでもだよ」
 また強い声で言う浩昭だった。
「あそこに行こう」
「行っても何もありませんよ」
「いや、それでも行かないよりはね」
「ましだっていうんですね」
「少なくとも歩いたままじゃこのまま野垂れ死にだよ」
 残念な現実である。まさにその通りだ。
「けれど。若しかしたらね」
「蜃気楼の先に何かあるかも、っていうんですね」
「そうだよ。だから行こうよ」
 蜃気楼の向こうのその栄えている街の姿を見てだ。浩昭は目を輝かせている。そのうえでだ。麻耶に対して告げているのである。
「蜃気楼のところにね」
「本当に何もなくてもですね」
「ああ、行こう」
 その言葉は変わらない。そこまで聞いてだ。
 麻耶もだ。遂にだ。浩昭のその言葉に頷くのだった。
「わかりました。それじゃあ」
「行くんだね、山縣君も」
「このままあてもなく彷徨っていても野垂れ死にしかありませんし」
 それなら仕方ないとだ。理由を付けてはいたがそれでもだった。
 彼も決意した。そうしてであった。
 浩昭と共にだ。前に踏み出す。砂漠の不安定な、踏み締めればそれだけで崩れてしまう下地を前へ前へと進んでいくのだった。
 蜃気楼は遠ざかるばかりだ。その距離は縮まらない。全くだ。
 だがそれでも二人は進んでいく。あくまで進んでいく。
 しかしその中でだ。彼等はだ。
 あるものを見ていた。それは何か。浩昭が言った。
「何かね」
「ええ、妙ですけれどね」
「希望?それが見えてきたかな」
 笑顔でだ。浩昭は麻耶に話すのだった。
「このまま進んでいけばひょっとしてね」
「辿り着けますかね、そして助かりますかね」
「うん、いけるよ」
 こう麻耶に話すのだった。
「ひょっとしたらだけれど」
「ですね。少なくとも目指す場所はできましたから」
「じゃあ先に進むか」
「はい、そうしましょう」
 こう言ってだ。二人は前に進む。そしてだ、
 やがてだ。二人はだった。その前に。
 街はなかった。しかしだった。そこにはだ。
 オアシスがあった。しかもだ。

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