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蜃気楼
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第一章

                        蜃気楼
 成田浩昭と山縣麻耶はだ。困った状況にあった。
 二人は遭難していた。しかも砂漠の中でだ。
 浩昭は背が高く逞しい顔をしている。筋肉質で黒髪を立たせている。目の光は強く四角い面長の顔のパーツはどれも引き締まっている。
 その浩昭に対して麻耶はいささか優男で背は一九〇近い浩昭より十センチ位低い。色は白く優男であり黒髪には癖がある。目は少し垂れている。
 その二人がだ。砂漠の中を歩きながらこう話をしていた。
「なあ山縣君」
「何ですか、成田さん」
「ここは一体何処なんだ?」
 浩昭はこう麻耶に尋ねるのだった。
「一体全体」
「何処かですか?」
「そうだ。何処なんだ?」
「それがわかってれば遭難していないと思いますか?」
 麻耶の言葉はだ。まさに核心だった。
「ですよね。地図もなくなりましたし」
「そうだね。参ったな」
「それに地図があってもです」
 それでもだとだ。麻耶は浩昭に対して話すのだった。二人は何とか立ってそうして前に進んでいる。しかしそれでもなのだ。
 周りに見えるのは砂ばかりだ。あとは頭がくるまでに照っている太陽、そして意味もなく青い空、そうしたものしか見えない。まさに砂漠だ。
 その中を二人で進んでだ。話をするのだった。
「こんなところで意味がありますか?」
「ないね。確かに」
「水もないですし」
 砂漠だから水がない。恐ろしい現実である。
「食べ物もないですし」
「砂漠の動物はいるよ」
「蠍や蛇ですけれど」
 名前を聞いただけで嫌になる動物達だ。
「どうします?刺されたり噛まれたりするのを覚悟で捕まえて食べますか?」
「毒、あるよね」
「絶対にありますね」
 そうした動物だ。ならばこれまた当然のことだった。
「それは」
「ううん、じゃあこのまま遭難し続けて」
「挙句は野垂れ死にですね」
「いやいや、そうはならないよ」
 浩昭はだ。まだこう言うのだった。
「俺達は助かるよ」
「そう言える根拠は何ですか?」
「何となくだけれど」
「何となくですか」
「ああ、俺達は助かるよ」
 こう麻耶に話すのだった。
「絶対にね」
「まさか。そんなことを言っても」
「まあ助かると思った方がいいよね」
「ええ。飛行機が墜落した時も終わったって思いましたから」
 二人が何故今この砂漠にいるかというとだ。操縦しているセスナが墜落してしまったからだ。二人はそのセスナから何と脱出してここにいるのだ。
 何とか怪我はないがそれでもだ。二人は遭難していた。そうして今はこうしてだ。砂漠を彷徨っているのである。だからここにいるのだ。
「けれどこうしてですね」
「生きてるじゃないか」
「つまり俺達は運がいいってい
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