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乱世の確率事象改変
曖昧な心地よさに満たされて
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動けないし、防衛人員に当てるつもりの文醜を連れてっても問題ないかもしれんな」
「雛ねえさまの狙いは、張勲を使い孫家の心理攪乱と内部不振。私もその案を推します、華琳様」
「……うん、ボクもおおまかには賛成。でも雛里……隠してる袁術はどうするの? それに張勲は明確な功績を上げてないから、華琳の部下に迎えるとしても弊害が大きいわよ? 孫呉が健在の状況で裏切る可能性は低いけど」

 憐みと同情を少し浮かべた瞳で、詠が少し首を傾げて雛里を見つめる。
 麗羽に袁の虐殺を命じたという事は、美羽は殺されなければならない。名を捨てて生きているからなどと甘い論理は通用しない。
 隠している事が孫呉にバレては意味が無いのだ。如何に店長の店といえど、七乃が素直に従っている事を読み取れば孫呉側は美羽が生きていることなど容易に気付くであろう。
 さらに、七乃が裏切ったといっても官渡の間に攻めてこなかっただけで功績が薄く、華琳直属の部下ならいざ知らず、月の下に付けるには何か大きな理由が欲しかった。

 しかしながら詠は少し読み誤った。鳳凰が何の手も打たずに帰ってくるわけがないのだ。

「問題ありません。華琳様は旧袁紹軍に血筋の根絶やしを命じましたが、南皮の本拠地には既に張勲さん従える旧袁術軍が向かっています」
「……へ?」

 一寸理解出来ずに詠は口を開けた。しかし直ぐに驚愕に目を見開き、苦々しげに歯を噛みしめる。
 ふ……と笑ったのは華琳。戦術面が強かった雛里の、戦略面での成長を見て取って。
 朔夜はむぅっと口を尖らせた。打ちたい手と考えていたが、行動に移せたのは雛里。わざわざ口に出す事はしなかったが。

「袁家征伐の手を既に打ってたとはな……ゆえゆえとえーりんみたいな事を袁術でするつもりなのか?」

 今度は彼も答えが読めた。
 明から聞いた異端者の話。たった一人の命が救われるならなんでもする同類。自分と明に近しい思考のその女なら、間違いなく取る手があった。

「その通りです。あの人が娘娘の給仕として働いている袁術さんの命を救う手立ては、孫呉に見つかる前に袁術が身罷った事実を上げること。現状では行方不明扱いですが、張勲さんの与り知らない所で勝手に一人で逃げ出し袁家に潜んでいた……など、どうとでも理由は付けられます」
「身代わりは……袁の血族の幼子だな?」

 大量に死ぬ袁家の内の一人が生贄となるだろう。
 年齢の別なくと自分が命じたのだ。それについては何も言えない。

「はい。なので華琳様には……歌姫の三姉妹の時と同じく世界に嘘を付いて頂く事になります」

 微笑みを浮かべて華琳を見据えるも、幼い見た目に反して、口から語られるのは狡猾な一手であった。

――ズルい言い方ね、雛里。

 心の中で苦笑した。
 前例が
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